【ジョーカー・ゲーム】綻びの紫苑

Ｄ課！6 ページ10

「んっんっ、就任にあたりまずは自己紹介を」

「必要ありません、名前だけで十分です。」

部屋に入り、皆に呼びかけた佐久間の言葉を三好が遮った。

「は？」

「僕達のことも、おいおい知っていって貰えれば。
まぁ、武藤課長が欲しい情報があるかは知りませんけど。」

そう言うと、三好は佐久間にニヤリと笑いかけた。

どうやら私たちが今回の人事異動について知っていることを知らなかったようで、佐久間は少し顔を警戒させた。

まず、知らないとでも思っていたのだろうか。

「そんな怖い顔しないでくださいよ。
それより、課長から今日中に解決して欲しい事件を下ろすと伺っていますが。」

「あ、ああ。そうだな、説明する。」

そう言い終えると、佐久間は説明を始めた。

被害者の女性、“吉良 加奈子(きら かなこ)”によると半年程前から度々夜道を何者かにつけられている気配がするようになった、さらにここ1ヶ月は自宅のポストに不審な手紙が入れられるようになり被害届を出すに至ったらしい。

吉良加奈子の写真を見た神永が、いつもの病気を発症してしまい佐久間が少し驚いていたが実井の一言により、また説明が続けられる。

彼女は、アイドルを志して昨年上京、一人暮らし。
昼は飲食店で働いており、その片端夜は事務所でレッスン。
イベント参加やライブ出演等をこなし、帰宅はほぼ毎日終電。

おそらく犯人はライブかイベントで吉良加奈子を知り、好意を募らせるあまり、そこからストーカー行為に及んだと見られるらしい。

「ちなみに、彼女に犯人の心当たりはないそうだ。」

「なるほど、先ほど言っていた不審な手紙というのは？」

「ここに預かった実物がある。」

佐久間はそう言うと、ビニールに包まれた紙、複数枚を机の上に置く。

私はその中を一枚を手に取って、内容をぼんやりと見た。

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