【ジョーカー・ゲーム】綻びの紫苑

dream 2 ページ23

やっぱり変な感じだ。

本当にこれは父と別人なのだろうか。

「父さん、離して。」

「嫌ですよ。」

「娘を口説くのはおかしい。私は義理だけど。」

「こんな美しい娘が居たらきっとどこにも離したくないですね。」

胸から離され、顎をグイッと持ち上げられる。

すぐそこに父さんの顔があるという状況、なかなかない事だ。

あれ、ちょっと待てよ。

「と、父さん。」

父さんの顔がどんどん近づいてきている。

それはまるで、王子様が眠りから覚めないお姫様に優しくキスするように。

「父さんそれは。」








「何を呑気に寝ている。」

はっと目を開けると、逆さまの父さんの顔。

その顔はいつも通りの怖い皺のある顔だった。

「あれ、戻ってる。」

「何を意味のわからないことを。
訓練の時間だ、早くしろ。」

「うん。」

ああそうだ。

私は訓練の休憩の合間に仮眠を取るべく、ソファに寝っ転がったのだ。

じゃあ、あの不思議な空間は夢という事らしい。

いつも通り着物を着ているし、父さんは口説いてこない。

「良かった、夢で。」

「何がだ。」

「ううん、何でも。」



これでいいのだ、私達は。

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