【ジョーカー・ゲーム】綻びの紫苑

Ｄ課！8 ページ12

そう言うと、佐久間は昨日の手紙を皆に配る。

「波多野さん、お願いします。」

「俺読む係じゃねぇんだけど…。
はぁ、“明後日が永遠に来ないで欲しい、僕はこれ以上君に遠くへ行って欲しくない。
僕は君を連れ去りたい。君をそれを望んでいるはずだ。きっと迎えに行くよ、待っててねきららちゃん。”」

先程に比べて不快に感じることはなかったが、ポエム調で恥ずかしい文なのに変わりはなかった。

「きららちゃん？」

甘利が手紙に書かれていた名前をオウム返しする。

「吉良加奈子の芸名だ。明日、彼女は初のソロライブを行う。
おそらくこのライブの前後、犯人に何らかの動きがあると見ている。」

「あー、だから遠くに行って欲しくない、か。」

「今回の目的は、誘拐を阻止すること。
ストーカー被害の現場を抑え、現行犯逮捕に持ち込むことですか？」

「いや、逮捕はしない。」

「あっ。」

「通常の捜査、犯人の逮捕が行えない事情がある。ですよね？佐久間さん。」

D課(うち)に回ってくる事件はいつもそうだ。

表に出せないような事件、つまり上官の親族が関与している事件や世間に出したら大変になるようなことになるものは、大体私達が対処しているのだ。

「被疑者はもう上がっているんでしょう？
上がっているからこそ、D課(うち)に依頼が来た。
通常の捜査で逮捕されるとまずい人物。」

「上官の子息？」

私は首をかしげながら佐久間に問う。

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