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「位置について、よぉい…」
「…ふ…」
「ドン!」
地面の氷を踏み締めて、走り出す。
パキ、パキと氷の割れる音が脚から伝わる。冷えるせいか肌からも風が伝わる。
「そこで止まって!」
「っ!」
脚に力を込め、ツルツルと滑る地面でなんとか動きを止める。ヒールで氷が削れるのが分かる。
「よし、いいよ〜!」
「うおおっ!」
切れ込みに斧を振り下ろす。氷は少し割れたが、まだまだ砕くには程遠いものだった。代わりに別のものが割れてしまった。
「ぺいんと!手!手!」
「うわぁぁあ!?」
不規則に割れた手が斧だけを掴んで離さなかった。
凸凹とした断面が僅かな光を拾って光る。
「まだ早かったかな…でも惜しかったよ」
「そうで、すか…」
「一回帰ろうか」
「はい…」
斧と割れた手を拾ってもらい、それらを残った腕で抱えて学校に戻ろうと歩き出す。
最初は新しい仕事に意気込んでいたが、分かっていた事だけど実際はとても辛い仕事だ。
ただでさえ光は薄く動くのもやっとなのに、流氷を割るという激しい動きをしなくてはならない。
僅かな光を拾ってなんとかできるが、それでも辛い。
でも強くなりたい、守る為には色んなことに挑戦しないといけないと思っている。
そう自分の思いに耽っていると、いつのまにか学校に着いていた。
「…ぺいんと、大丈夫?」
「ぁ⁈え、あ、はい!」
「医務室へ行こう。手を閉じないと」
「わかりました…」
カツ、カツとヒールの音が校内に響く。
俺とクロノアさんと先生以外、皆寝ているので余計に静かに感じる。自分の周りの空気がより鮮明に感じるとともに、より冷たく乾燥しているように感じる。
そうぼーっと歩いていると、医務室に着いていた。
「大丈夫?ぺいんと…?」
「え…はい、大丈夫です!」
「そう?無理しないでね。」
「はい…」
少し喋りながら医務室のベンチに座る。近くにあった木の籠をクロノアさんに取ってもらい、そこに自分の手を入れた。クロノアさんはそのまま糊と木の篦を取りに行った。
「…」
ふと、雪の積もった外を見る。陽には照らされて居ないものの、キラ、キラと切なく光っている。
あの雪は溶けてしまうのだろう、そう思うと寂しく感じてしまう。普通に冬眠をすれば、そんなこと気にしないだろう、だけど、今だけは雪さえも溶けてしまうのは嫌だ、と思ってしまう。
冬が過ぎてしまうのに抵抗があるということを知ってしまった。
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作者名:匿名 | 作成日時:2022年12月18日 18時