※ カツ丼は腹八分目まで！【 YOI 】 (ページ5)

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十分なストレッチをしてから、スマートフォンから音楽を流す。

アラベスクの時に少し感じる股関節の痛みが今の私には少し心地よかった。
いつもは気持ちよく感じる、ピケの時の優越感が気持ち悪く感じる。

「……急に教室開けてくれなんていうから、現役復活するのかと思ったじゃない」

「私が何で新体操辞めたか、覚えてないんですか？」

ジャンプターンをしながら答える。
選抜試験に落ちたからじゃない。
本当は、こうやってストレス発散に新体操をしてしまうことが嫌になったから。

勿体ない、団体じゃなくても個人がある。クラブとリボンが得意なんでしょ？
沢山の人から励ましの言葉を貰った。

それでも私は首を横に振った。
演技をしている時楽しみを感じられないなんて死んだも同然。

競技者としての私は死んだのだった。

唯一の新体操という取り柄が亡くなった今。
優子ちゃんに勝る部分なんて一つもない。
ほら、また他人と自分を比べる。
これも自分の悪いトコ。

もう、やんなっちゃうなぁ。

「A。ちょっとこっち来なさい」

そういったミナコ先生にがばっと抱きしめられる。

「どうせ、思いっきり泣いてないんでしょ。私の胸で、泣けばいいわ」

「ミナコせんせ、っ、」

ミナコ先生の一言でプツンと糸が切れたように、大声でうわんうわんと泣いてしまった。

こういう時、ミナコ先生は優しくなる。