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しっかりと荷物の確認をして、バスに乗り込むことになった。

 めいは当然治くんの隣に座る。

 こっちに向かって手を振ってくる侑くんを視界に捉えたわたしは、侑くんに手を振り返して。


 それから、侑くんの横を通り過ぎて角名くんの隣に座った。


「え、ちょっと。なんで俺?
 侑は?」

「角名くんは良い奴だって、めいが言ってたよ」


 侑は、という質問は完全スルーして、そう話す。

 わたしにも考えがあるのだ。


 ちらりと前方を伺えば、振り返っている侑くんの顔が目に入る。
 角名くんに理由を話したいんだけど、これではどうしても侑くんに気を取られてしまう。


「……ごめん、席変わってもらっても?」

「いいけど。俺良い奴だから、窓側は譲ってあげる」

「ありがと」


 自己肯定感高めの返しに、つい笑ってしまう。
 角名くんは一瞬何処かへ視線を移し、またわたしを見つめ直した。


「あ、そうそう。この行動には理由があるのね?
 ……わたし侑くんが好きなんだけどね……」


 小声でそう言えば、角名くんは呆れたような顔をした。


「いや、それは知ってるけど」

「あ、なら話は早いね。どうしても侑くんから告白してほしいの。
 だから、引いてみようと思って」


 角名くんが、え、と声を漏らして目を見開く。

 分かる。驚くの分かる。
 わたしは確かにクールではないから、追われるタイプではない。
 けれど、押してダメなら引いてみよう作戦をするほど押しが強いタイプでもない。

 むしろ押されがちなタイプなのだ。


「分かるよ?驚くの。
 でもそれしか思いつかなくて」

「…………いや、結構いい作戦だと思う。
 けど、俺は巻き込まないでほしかった、かも」


 ごめんと謝ると、もういいけど、と返してくれる。

 本当に良い奴なんだなと思う。


「じゃあもう俺寝てもいいかな」

「いいよ、わたしも寝る。おやすみ」

「今日早かったもんね。おやすみ」



 今回の遠征で利用できるものは利用して、何とか侑くんを焦らせてみせるつもりだ。

 もちろんめいも治くんも、それから角名くんも手伝ってくれる、はず。


 頑張ろうと今一度気合いを入れ直して、まずは寝ることにした。

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作者名:ビール瓶 | 作成日時:2021年8月10日 19時

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