トロール ページ31
．
「ねぇ、いるんでしょ？」
いつまでも返事が来ない個室をじっと見つめる
ホントにいるのかと不安になり、よく耳を澄ますと確かに啜り泣く声が聞こえた
「…A……」
すんすんといつまでも泣き止まない声
少しの時間が経ち、Aの足が痛くなり始めた頃
ポツリと名前が呟かれた
「なぁに」
そうして優しく問いかけるとゆっくりと出てきた
Aが愛してやまない親友のハーマイオニー
いつものくりくりとした目は赤く腫れていた
「A、A…！｣
広げられた腕に飛び込むように抱きつく
縋るようにハーマイオニーは彼女の名前を呼び続けた
*
「そう！ロンなら私が何とかしてあげるわ」
「何とか？？」
何するつもり？とくすくす笑う様子。先程の泣いていた姿はすっかり消えていた
そんな和んできた中、突然きた酷い悪臭
そして何かの足音
何か、くる…
「あ、ああ…トロール…！！！」
悲鳴のような声を上げて端に身を寄せる
トロールはここぞとばかりに棍棒を力任せに振り回した
「ハーマイオニー、杖…っ！は持ってないわよね、杖を持ってる私がどうにかしないと…！！！」
記憶の中の使える呪文を思い返す
思い出すのはどれも自分が成功させることが出来るのか難しい呪文ばかりだった
そんな一瞬の迷いが仇となったか、ハーマイオニーの頭上に真っ直ぐと振り下ろされる棍棒
「あぶない！！！！」
ギュッと目を瞑る
いつまでも衝撃が来ないことを不思議に感じたハーマイオニーが恐る恐る目を開けると…
目の前には大好きな、親友の…頭から血をダラダラと流す姿。
「A、」
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作者名：おらぶ | 作成日時：2021年9月26日 7時
