64話 ページ16
そのまま暫く待っていると、何処かでガタッと物音がした。私は事の顛末を知っているから何とも思わないが、何も知らない敦くんはひどく怯え、太宰さんが話し出す。
「そもそも変なのだよ」
1人や2人追い出したところで経営不振は変わらない。半分ほど別の施設に移したほうがいい。
そして、敦くんが訪れた場所と虎の目撃情報の時期と場所の一致。
以上の事から分かる事は、
「君だけが解っていなかったのだよ。君も異能の者だ」
月明かりを浴びて苦しみ悶える敦くん。
私は静かにそれを見つめていた。本当は今すぐにでも敦くんに駆け寄りたかったけど、そんな事したらどうなるか分からない。
そして、苦しむ声が収まった時、そこに居たのは、月下に佇む一匹の虎だった。
「Aちゃん、隠れてい給え」
「は、はい!」
太宰さんに言われるがまま近くのコンテナの陰に隠れる。
アニメでは散々みたけど、実際に見ると迫力が違う。元の世界で見たものは創作物だった。でも今は違う。
間違いなく、此処は現実なのだと、思い知らされた。
グルルル、と唸り襲いかかる虎。太宰さんは鋭い爪の攻撃をひらりと躱す。それを何度か繰り返し、またもや正面から飛び掛る虎に太宰さんは手を伸ばし、
「君では私を殺せない」
指先が虎の毛に触れた。
すると、青白い光が放たれ、虎だったものは敦くんに戻り、太宰さんに寄りかかる。
然し「男と抱き合う趣味はない」と太宰さんは手を離し、敦くんを地面に落とした。
それを見て私は「何やってるんですか!?」と叫ぶ。敦くんに駆け寄って身体を起こす。
「敦くんを雑に扱わないでください!」
「ええ?でも彼を元に戻したのは私だよ?」
「それは……格好良かったけど!めちゃくちゃ格好良かったですよもう!でもそれとこれとは別!」
幾ら貴方が推しといえど、敦くんも推しなので!ここは譲れません!
そっと敦くんの顔を覗き込むと疲れきったように目を瞑って眠っていた。異能力使うのって体力使いそうだもんね。
「おい太宰!」
「あれ遅かったね。虎は捕まえたよ」
欲望に負けて敦くんの髪の毛に触っていたら、国木田さんの声がした。後ろには与謝野さんや乱歩さん、後まだ喋った事ない賢治君もいる。
う、うわあああああ!!美形が!!並んでる!!
美形に目が眩んでいると、ふと気付く。
……私、別に此処に来る必要無かったのでは?
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食塩水(プロフ) - 名前さん» 長い間待っていて下さりありがとうございます!優しいお言葉、身に染みます…これからも不定期更新ではありますが、あんなにお待たせしないように書き進めていきたいと思います! (2020年6月14日 22時) (レス) id: b80a6fdf4d (このIDを非表示/違反報告)
食塩水(プロフ) - まやさん» 長い間待っていて下さりありがとうございます!これからはあんなにお待たせする事がないように書き進めていきたいと思います…! (2020年6月14日 22時) (レス) id: b80a6fdf4d (このIDを非表示/違反報告)
食塩水(プロフ) - あやめさん» 更新お待たせ致しました…!2ページ"も"と捉えて頂けてありがたいです!自己満足な作品ではありますが少しでも楽しんで頂けるよう、もっと更新出来るように頑張りますね! (2020年6月14日 22時) (レス) id: b80a6fdf4d (このIDを非表示/違反報告)
名前 - 更新されてる……ありがとうこざいまああす!これからも作者さんのペースで頑張ってください!楽しみに待ってます!! (2020年6月14日 21時) (レス) id: 6e285a92e8 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - 更新ありがとうございます!!これからも更新待ってます!頑張ってください!!!! (2020年6月14日 15時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
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