第0話『モーニング・グローリー・フィズ』(グロ注意) ページ5
？？年前。
それは、2人しか知らない事。
それは、2人しか覚えていないある日の出来事。
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『死にたく......ないなァ......』
男は空に手を伸ばすと、今にも死にそうな体から言葉を発した。
口や鼻からは、常人では有り得ないほどの血を流し、足や腕は口では現れないような方向を向いていた。
骨が折れている。
それだけならばどれほど楽なものだろう。
しかし、男の体はそれ以上としか言いようのない外傷を負っていた。
今伸ばしている腕でさえ、指の血管が詰まっているのだろう。
赤黒く青くも見える異色の色を見せながら、掌から腕にかけて血がポタポタと垂れている。
『鳥......は、いいな......飛べて......逃げれる......』
笑うことしか出来ないのか、男は薄ら笑みを見せながら、空を悠々と飛ぶ鳥に手を伸ばす。
「......アホか、テメェ」
──ガラガラッ。
地面のように、そこら中に散らばっている瓦礫の中から、突然男が現れた。
いや、正確には、瓦礫に埋もれていた状況から、這い出てきたといった方が正しいだろう。
『あァ......貴方か』
伸ばした腕を下ろそうともしない男は、目だけをその男に向ける。
瓦礫から出てきた男は、明らかに傷を負っている状況なのに対して、かすり傷少ししか見せてない。
体が丈夫。
そう言えることではない気がするが、今の状況ではそれしか言葉が出てこない。
「お前の能力があれば、空を飛ぶことなんて容易いだろ」
『......この状況で？』
餓死寸前な男の隣に座ると、男は服を破き傷の手当を始める。
簡単な処置しか出来ないが、やらないよりは意味があることだろう。
『あと......あと数分後に死ぬ私に、そんな言葉がよく言えますね......ホント』
伸ばした腕を力なく下ろすと、男は吐き捨てるように言った。
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作者名：ヒロ子 | 作成日時：2019年10月15日 17時
