覚悟を蹴散らせ ページ21
引き留める言葉も自分の命すら無視してゲンゾウを助けまいと動いたノジコに、ウソップは足の震えを止めた。
『助けに行くのか、キャプテン』
からかうAに「キャプテンじゃねェ」と言ったウソップは、武器のパチンコを握りしめる。「魚人に手を出せば殺される」と言ったノジコの言葉が脳裏を巡ったが、ここで動かなければ男ではない。
逃げだそうと震える足を無理矢理動かすウソップの目は、まさに漢の目だ。
「おれが死んだら、どうか勇姿を語り継いでくれ……」
『それが遺言か？ お使い役なんて、おれはゴメンだぜ』
Aがコートの裾を掴んでたくし上げると、ゴロゴロと出てくる火薬の数々。
どこからこんなに仕入れたのかと思うほど多い火薬と、某青猫が持つポケットのごとくなんでも収まるコートにウソップは度肝を抜かれた。
そして火薬を拾い上げたAは、ある作戦を語った。
＊
ゲンゾウは、死を覚悟していた。いや、もっと前からその覚悟は決めていたつもりだ。
旧友を殺され、幼い少女を目の前でさらわれたときから、ゲンゾウは死ぬ覚悟を持って生きてきた。
そして、その覚悟が役立つ日が今日だっただけである。
「死んでしまっては全てが終わる!!! 私が死んでも、戦うことをやめるな……!!!」
「…………!!!」
ゲンゾウの言葉に皆が息を飲んだ。
そして自分を持ち上げたアーロンの言葉に耳を支配され、ゲンゾウはそのまま振り下ろされた。地面との距離は目と鼻の先。
絶体絶命の大ピンチ。
こんな時に現れるのは、勇気のあるヒーローか正義の名を語る海兵……だが、彼の命を救ったのは二人の嘘つきだった。
“火薬星”ィ！！！！
男の声とともに放たれた弾。
体に当たると同時にアーロンとともに爆発した弾こと火薬星により、ゲンゾウは九死に一生を得た。
「見ろ!! あそこだ!!!」
「屋根の上に誰かいるぞ!!!」
魚人達が指さす屋根に立つ男達……Aとウソップは、武器を片手にアーロンを見下ろす。
「おれの名は勇敢な海の戦士!!! キャプテ〜〜〜ン・ウソップ!!!」
『と、Aです』
生まれたばかりの山羊のように足を尋常ではないほど振るわせ、武者震いを見せつけるウソップの隣とAに魚人達は牙をむき出した。
なんの偶然か先程Aが気絶させた魚人もおり、彼の顔を見るなり恐怖に包まれた顔でアーロンへ一報を入れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 165人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
滝登りのヒロ子(プロフ) - 猫か犬だと猫派さん» 更新を楽しみにしてくださり、ありがとうございます!!乱暴な性格のおじさんっていいですよね(●︎´▽︎`●︎)。ありがとうございます!! (2022年9月23日 8時) (
レス) id: 84d0737003 (このIDを非表示/違反報告)
滝登りのヒロ子(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます！無理せずに楽しく頑張らせていただきます!! (2022年9月23日 8時) (レス) id: 84d0737003 (このIDを非表示/違反報告)
猫か犬だと猫派 - 続編楽しみにしてました〜。毎日更新されてとても尊敬しています！夢主さんの性格も大好きで、とても更新されるのを楽しみにしています！ (2022年9月19日 15時) (レス) id: b2d9f0611e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - 続編おめでとうございます！男主にビビッときてしまいました！無理せず頑張ってください！！ (2022年9月19日 15時) (レス) id: 7ea8debc19 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヒロ子 | 作成日時：2022年9月13日 19時
