金の亡者 ページ8
『何言ってんだ、ナミ』
「何よ、10億ベリーじゃ不満？ 欲張りねーアンタも」
ため息をつきながらナミに歩み寄るAは、甘いなと呟いた。
『おれなら初めは1億で話をつけて、少しずつ2億3億と増やしていき、最終的に15億ほど請求するぜ』
「ふっさすがね……負けたわ」
「いや請求するなよ!!」
隣で話を聞いていたゾロは、渾身のツッコミを炸裂させた。
『そうじゃなくて、おれ達には関係ないって話だ。関わる理由もないし、相手はあのバロックワークスだ。アーロンみたいなちっぽけな海賊集団とはちげェんだぞ』
「まったく、あんたには人を思いやる気持ちってのがないのかしら」
『金で人を助けようとしてる女に言われたくないな』
自分にも飛んでくる言葉のブーメランをAは華麗に交わす。
金のためなら簡単に人の命を奪う人間に、ナミも言われたくないだろう。
「仕方ないわね」
ため息をついたナミは、指を4本立てるとそれをAに突き出した。
「協力してくれたら、報酬の4割をアンタにあげるわ。相手がバロックワークスでもなんでも、Aの馬鹿力でなんとかなるかもしれないし」
『…………』
30秒ほどの沈黙が流れる。
ぷるぷると震えるAの目は、いつもの怖い顔をより真剣に怖い顔へと変える。
ナミの手を弾いたAの行動に、ゾロは「さすがのAでも、バロックワークス相手だと断るのか」と心の中で呟く。だが、Aという人間はそこまでちゃんとしていないし、筋が通った男でもない。
『4割じゃダメだ、5割にしろ』
「嫌よ、アンタなんかに5億なんて勿体ないわ」
避けたブーメランが体を貫き突き刺さるほどの手のひら返しを見せたAは、ナミとの5分間の葛藤の末、4億5000万ベリーで話をつけた。そして、ナミと固い握手を交わす。
まだ、イガラムが払うと一言も言っていないのにだ。
「私のような一兵隊に、そんな大金の約束は……!!!」
『なら、王女様に直接交渉すればいい。あんたはそれができる立場にいるようだからなァ』
「……!!」
ニコニコと笑みを浮かべるAは、イガラムの首根っこを掴みながら言う。そんな彼に恐怖を抱くイガラムは、ただ頷くことしかできない。
脅迫にも似たその様子に、ゾロは顔を引き攣らせながらAとナミという二人の金の亡者を見た。
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作者名：ヒロ子 | 作成日時：2022年9月22日 19時
