「裏切りの黒」 ページ33
「!!!?」
身を案じたMr.3は、能力を駆使して即座に壁を作る。
鉄の強度を誇る蝋の壁だ。そうやすやすは壊されないだろう。
ビキビキ……ビキ…………ビキビキビキビキビキビキ。
そんな余裕を持つ暇もなく、音を立てて崩れてゆく壁。顔を青くし、言葉を飲み込んだMr.3は、呆気なくルフィにぶっ飛ばされてしまった。
『よし、ルフィ!! 今のうちにキャンドルを壊せ!!』
「…………」
『どうした』
「……いやだ」
『はァ？ 何言ってんだお前、助けたいんじゃないのか!?』
Aに向かって首を振るルフィに、ゾロ達も驚きの顔を見せた。
一刻を争う事態。ルフィが助けたいと言い出してここまできたのだ。王女様を助けなければ、わざわざ面倒事の荒波へと突っ込んで行ったAの心は報われない。
「A、どうしよう、おれ、あいつら助けたくねェ」
『……あんたか、嬢ちゃん』
ふ──と煙を吐いたAは、落ち着きを取り戻して後ろを振り返った。
パリッと煎餅を食べるミス・ゴールデンウィークは彼と同様、落ち着いた様子でAと目を合わせた。
「“カラーズトラップ”「裏切りの黒」。黒の絵の具にふれたら、どんなに大切な仲間の言葉でも
『つまり暗示か』
感情の色さえもリアルに作り出す「写実画家」のミス・ゴールデンウィーク。彼女の洗練された色彩のイメージは、絵の具を伝って人の心に暗示をかけるのだ。
『そりゃ困った、単純バカには暗示だの催眠術だのがよく効いちまう。必要以上にな』
「A、おれどうすれば……」
『そうだな……うん、わかった』
Aは少し悩んだ素振りを見せると、ルフィに言った。
『その黒のサークルから絶対に動くな。あいつらはお前の助けなんて求めちゃいねェよ』
「…………いやだ」
裏切りの黒。
裏を返せば、どんなものでも天邪鬼に行動してしまう状態だ。
Aに言われた通り、サークルから絶対に動き、仲間を助けようとしたルフィは、裏切りの黒の暗示を解除する。
『よし、何度も言うがルフィ、早くアイツらを……』
「ぶわっはっはっはっはっはっはっは!!! そんなことより笑っとくか!!!」
『なんでだよ!!』
「“カラーズトラップ”「笑いの黄色」。だめじゃない動いちゃ……」
今度は服に暗示の印を描かれたルフィは、口がはち切れるほど爆笑してしまう。
『ったく、ほんっとテメェは!!』
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作者名：ヒロ子 | 作成日時：2022年9月22日 19時
