歓迎の夜 ページ4
『たまには月見酒ってのも悪くねェもんだな。これが満月だったら文句はねェ』
欠けた月を眺めながら、夜風に当たるAは瓶の中に残っていたわずかな酒を飲み干した。
月が出ても、ウイスキーピークの歓迎の宴は続く。
宿では、ウソップの自慢大会、ゾロとナミの酒豪対決、ルフィの大食い披露などが繰り広げられていたが、Aには参加する意欲が起きなかった。
『なんにしても怪しすぎるんだよな、この町』
空になった瓶を片手に、Aは呟く。
町の人間が総出で誘われ、幼い子供からも泣きながらコートの裾を引っ張られたが、逃げるように宿の屋上へと避難したA。そんな彼が、逃げる最中にすかさず酒瓶を手に取ったことは流石としか言いようがない。
いくら歓迎の町だからといっても、さすがに限度があるというものだ。あんなにも執拗に酒を飲ませようとしたり、女を使って宴に誘うという行為は返ってAの不信感を煽ることになった。
『そんで、極めつけはこれだ……“バロックワークス”』
翼のような紋章が特徴的なドクロマークが描かれた紙を眺めながら、Aは呟いた。
先程、引き留めようとしていた町の男の一人から盗んだものだ。
秘密結社・バロックワークス。社員達はお互いの素性すら知ることが出来ない徹底ぶりを極めており、幹部でさえボスの居場所も正体も知らされていない謎ばかりが渦巻く組織──だが、ボスの居場所も正体も何もかもを知っているAからしてみれば、秘密結社など名ばかりの集団で会った。
『あーまた面倒事だぜ。どうせルフィ達は眠らされてるんだろうし……さっさとこの町から出て次の島に行くか』
ログなどなくても勘でなんとかなるだろ、とAはため息とともに吐き捨てた。
『つーことで、せっかくの歓迎ムードを壊して悪いんだがおいとまさせて頂くよ──バロックワークスの社員さん』
「それは残念だ……また一つ、サボテンの墓標が増える」
四つの影が、Aを睨み付ける。
町長のイガラッポイとシスターのミス・マンデー、そしてMr.9とミス・ウェンズデーは、自分達を見下ろすAに殺気を向けた。
『おいおい勘弁してくれよ、おれは何も戦る気じゃない。できれば話し合いで解決したいんだ』
「悪いが、我々の正体を知られたからには消さなくてはならない」
『……おれは強いぜ？』
「この数を相手にすることになってもか？」
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作者名：ヒロ子 | 作成日時：2022年9月22日 19時
