“嘘つき”は神に祈る Ⅲ (ページ30)

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救世主現るページ30

それに抗う男が一人。ゾロは、自分の足を犠牲にしてこの窮地を脱しようとしていた。

　反対するナミとビビの意見を笑い飛ばしたゾロは、ブロギーに発破をかける。

　こんなカス相手に潔く死んでやる筋合いはない。

　その言葉にブロギーはハッとして目を見開くと、腹の底から笑い声をあげた。
　生意気な小僧だと呟き、戦意を喪失した敗北者から戦士に戻った彼はパキパキと腕をゆっくりと動かす。少しでも動けば手のひらに走る激痛は、彼の戦意を削ぐことすらできない。

「行くぞォ!!!!」

　ブロギーの声を合図に自身の足に向かって刀を構えたゾロは、なぜかある男の顔を思い浮かべた。
　ただの偶然だったのかもしれない。もしかしたら、そんな希望を無意識に抱いたせいかもしれない。

　ただ、ゾロの頭の中には『足斬り落とすぐらい生きてェの？』と嘲笑うAのムカつく顔があった。

　ムカつきのあまり、刀を握る手に力が入る。
　「それぐらい生きてェんだよ」と呟いたゾロの言葉に、返ってくる言葉はなかった。
　そして、その代わりとして返ってきたのは──

『落ち着けテメェら!!!』

「「「おりゃああああああああ!!!!」」」

　Aの慌てた声と、仲間の威勢の良い声だった。

「お前らァ!!! ぶっ飛ばしてやるからな～～っ……～～～～……」

『お前ら、前見ろ前』

　ドカーーーンッとルフィ達が森林の木にぶつかると同時に、Aは呆れた顔で「言わんこっちゃない」と呟いた。

　突然のA達の登場に、その場にいた者たちは言葉を失った。
　勝利を確信した敵と、敗北を確信してもなお抗う海賊の中に、戦る気満々なルフィ達が突っ込んできたんだ。それはもう驚くことしかできないだろう。

「やるぞウソップ!!! 鳥ィ!!!! Aッ!!!!!!」

『だから、おれ入れるなっての』

　A達の姿を改めて確認したナミは、涙を流しながら名前を叫んだ。

「A……」

『お、いい感じじゃねェかロロノア。サンジに見てもらえ、笑ってくれるぜ』

「ハッ、あいつに笑われるぐらいなら大人しく蝋人形にさせる道を選ぶまでだ」

　心做しか、ゾロの顔に安堵の二文字が浮かんだ。

「A!!! あんた、ビビを守らなかったってどういうことよ!!? 罰としてそいつらホントにもう関係ないくらいボッコボコにして、どっか遠くへブッ飛ばしちゃいなさい!!」

　ビビから一連の流れを聞いたであろうナミに、Aは怖い怖いと笑った。