男は愛嬌 女は度胸 ページ17
「冒険のにおいがするっ!!!」
『そうか、良かったな』
「A!! 冒険のにおいがする!!!」
『おう、良かったから離せ』
「A!!!」
『良かったなっつってんだろゴム野郎、いい加減離しやがれ』
いい加減コートが裂けるのではないか、と思うほどさけるチーズが如く引っ張るルフィの頭にAは拳を落とした。
幼少期、ルフィと森へ入る度に何かしら問題を起こしてきたことをAは思い出す。ルフィが大蛇に丸呑みにされたときも、川に落っこちて危うく流し素麺のように滝から落ちそうになったときも、危機から救ってきたのはすべてAだった。
森ひとつで100万回死んだルフィが語れそうなのに、ジャングルだと何千万回死ぬのかわからない。そんな彼について行く気など、Aにはなかった。
少し前のルフィであれば死ぬかもしれないという気持ちで同行したが、アーロンを倒し、今現在クロコダイルを相手取っているルフィがジャングルで死ぬようでは困るとAは心の中で呟き、コートからルフィを引き剥がした。
「ちぇーっ、行かねェのかよ。前までは一緒に楽しく冒険してたのに」
『前も楽しくはしてねェよ』
冒険する気などさらっさらないAとは逆に、「私も一緒に行っていい？」と聞いてきたのは予想外にもビビであった。
そんなじっとしていれば考え事をしてしまうという彼女を、ナミとAは止めた。
「ちょっと、あんたまで何言うの!?」
『王女様の身になにかあったら困るぜ。悪いことは言わねェ、あんたは大人しくしてな』
「大丈夫よ!! カルーがいるから。それに、あなたも一緒に来てくれるんでしょ？」
『はァ？ 何言ってんだ。おれは行く気なんて』
ふふっと笑ったビビに、Aは嫌な予感を感じる。
「王女様の身になにかあったら困るんでしょ？」
『それは……大人しくしとけって話だ』
「じゃあ大人しく冒険するわ」
『……あー……くそ』
王女様とは度胸も肝も座っているようで、あからさまに睨みつけてきたAにも臆することなく笑顔で返した。
一本取られた、と言いたげにAは髪を掻き毟るとビビの頭に手を乗せて「負けた」と敗北を宣言した。
「よし!! 行くぞ!!!」
「おおよそで戻って来るからっ!!」
『(神様……何事もなく無事に出航できますように……)』
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作者名：ヒロ子 | 作成日時：2022年9月22日 19時
