“嘘つき”は神に祈る Ⅲ (ページ2)

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回顧の夢ページ2

過去の夢を見るのは、現在に不満を抱いており、楽しかった頃や逃げてしまいたいという思いが反映されているというデータがある。
　しかし、今も昔も“金”以外には興味の欠片もないAには、過去に求めるものなどない。

　ただ一つだけ現状に不満があるとするなら、自由に使える金も権力も何もないことぐらいだろう──

『バナナワニの捕獲？』

「サー・クロコダイルの勧誘だ。耳が腐っているのか貴様」

　五老星の一人の言葉に、「ロクに休みも貰えていないものでね、そりゃ耳も腐り落ちますよ」とAは嫌みを垂らす。

　七武海制度ができてから、仕事が増えに増えたAは“海兵狩り”として名を轟かせているミホークの件も相まって、連日寝不足の日々を送っていた。
　目の下にできた大きな隈は、一週間の健康的な食事問う運動と睡眠を続けなければ消えないほどにこびりついている。

「貴様の働きにより、鷹の目は七武海の勧誘を飲むそうだ」

「奴を野放しにしていれば、この先の海では犠牲者が増え続けるばかりだった。A、よくやってくれた」

『それはそれは……身に余るお言葉です』

　三日三晩の激闘の末、Aがミホークに気に入られたことで七武海入りを決断したといっても過言ではない。
　もちろん、Aが命をかけてまで働いたのは金のためである。任務さえ成功すれば、ボーナスが丸ごと手に入る。そんなもの、札束が目の前に落ちているようなものだ。Aが食いつかないわけがない。

「そこでだ、今回の働き振りから、貴様にクロコダイルの七武海勧誘の任務を命ずる」

『異議を申し立てます』

「臨時の任務と危険性から、それなりの額は出すつもりだ」

『この命に代えても、必ず成し遂げて見せます。お任せてください五老星』

　命より金と言う人間がいるが、そんな奴らが集まった大会で優勝出来るのはAなのかもしれない。既に金のことで脳内が埋め尽くされているAは、その年一番の笑みを浮かべていた──

「起きんかッ!!!」

『あ？』

　夢の中を彷徨っていたAは、突然感じた殺気に目を覚ました。
　ゾロの膝から頭を起こしたAは、こちらを睨み付けるナミに首を傾げた。

「あんた、何寝てんのよ……起こしても起こしてもゾロと一緒に仲良くおねんねして……!!」

　拳を握るナミによって振り下ろされた拳は、Aの頭に衝撃を浴びせた。