“嘘つき”は神に祈る Ⅲ (ページ25)

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“戦士” ページ25

ドォオ……ン！！！

　地響きとともに上がったのは、山頂から立ち上る一筋の煙……真ん中山の噴火だ。
　エルバフの戦士であれば今日は景気がいいのかと笑うが、胃を爆弾によって血みどろにされた負傷兵からしてみれば、火山の噴火度数の右肩下がりを願ったことだろう。

『おい、無茶だぜおっさん』

「だめよドリーさん、安静にしてなきゃ……!!!」

「そうだ!! 行くなおっさん!!!」

　目覚ましによって叩き起された学生のように、眠りを妨げられたドリーは血反吐をA達に見せつけながら立ち上がる。産まれたての小鹿のように可愛いとはいえない震え方は、生命の誕生とは逆に“死”を思わせた。

「我ここにあり、戦士ドリー!!!! ……せめテ…ｺﾞﾌﾞｯエルバフの名に恥じぬ戦いを……!!!!」

『国の名に恥も何もねェだろ』

　国のために死を、誇りのためにこの命を。そんな気持ちなど到底理解できないAは、ぽつりと呟いた。
　隣でギャーギャー騒ぐルフィは、ドリーを死なせたくないという感情で手足をばたつかせた。

『諦めろルフィ、行くっつってんだから行かせてやれよ。お前も一人の人間ならわかるだろ、あれが信念だ……て、ゴム人間に信念もクソもないか』

「!! ゴム……？」

『おう、こいつゴムなのよ。能力者ってやつ』

　自分の足に腕を伸ばし、ぐるぐると巻くルフィにドリーは驚きを見せた。

「あーーーっ!!! 何すんだこのやろう!!!」

「ゴムなら……潰れても死なないだろう……」

『あんた賢いな、おれも今度からこうして暴れないようにしてみるか……』

「納得してないで助けろA!!!」

　ドリーの家こと巨大な恐竜の骨に下半身を押しつぶされたルフィは、1歩たりとも動けない状態にされてしまった。
　これでは、ドリーを止めることすらできない。いいや、元よりその必要はないのだ。

「止まれねェのさ、100年も前の話だが……戦いを始めちまった(・・・・・・)……いったん始めた戦いから逃げることは、戦士という名からも逃げるということだ」

　“戦士でなくなれば、おれはおれでなくなるのだ”。

　ドリーの言葉が、ルフィの胸に刺さった。

『(……戦士でなくてもお前だろうに)』

　残念なことに、戦士の意味も理解していない男には刺さっていないようだった。

　「悪かったな、お前らを疑った」と謝罪したドリーは、もう一度口を開くと「特にA……すまなかった」と煙を吹かす彼を見つめた。