【wrwrd】画面の向こうに恋はしない

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「どうも、Aです。今日は久しぶりにゲーセン来てます。いや〜、相変わらず静かですね。今日も今日とて貸切です。今日はDDRの新作筐体(きょうたい)が出たのでそれやろうかなと思って」
「あ、新曲出てますね！知らない曲なのでまぁ手軽に激行こうと思います」
【DDRの難易度は習→楽→踊→激→鬼の順に難しい】

カメラを置き、足元だけが見れるように設置する。もう慣れたもので、念の為の確認にカメラを覗き込んでみてもちゃんと足元だけが写るようになっている。よし、と軽く準備をしていれば、ここの店長が話しかけてきた。

「A、今日もありがとね〜」
「いえいえ、いつも貸切でここ使わせていただいてるんで全然大丈夫です」
「今日も、"実況者Aがいるのはここですか？"なんて聞かれてねぇ」
「迷惑かけてないですか？一応毎回迷惑はかけないようにって言ってるんですけど、一部のリスナーなんかは面倒だったりするでしょ？」
「その時は警察呼ぶから！近くに警察署があって良かった」

ここの店長とは仲が良い。親戚の親戚くらいの遠縁で、実況を初めた初期くらいの時にゲームが好きなら、と両親が会わせてくれたのだ。そしてまさかのまさか、店長さんは私のリスナーだったのだ。

私は実況界隈では珍しいゲームセンターの筐体をそのまま実況できる。店長は私を探すためにお店に来るリスナーを客として扱える。WinWinの協定なのである。

「実はまだ届いたばかりの音ゲーもあるんだけど、どう？」
「えっ、良いですね。DDRやったらやってみますね」

もう一度軽く準備運動してからコインを入れる。さぁ、私の実況が始まる。

そのタイミングで、私の携帯に通知音が来ていることに一切気付けなかった。その通知が、私の人生を変えることには知らずに。

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