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010:扉を開けるには ページ10




脊髄反射で跳ね上がった。
こんなに間近でこいつを見た事など、ある方がおかしい。澁澤龍彦から視線を外して、ドキドキした心臓と呼吸を抑えながら、犯人である男をキッと睨んだ。


「ドストエフスキー!!」

「…なるほど、この課題は一連してAさんが関係しているようですね」


そんな私を露知らず。
乙女心を軽率に扱った男はなんの気も知らずに顎に手を当て、そしてゆっくりと私を見た。

しかもこの部屋が───





「……待ってくださいね、今なんて?」




怒る暇なく耳を疑ったあと
無表情のままのドストエフスキーに聞き返した。

聞き間違えじゃなければいいんだけど
私には聞き取ることができずさっぱり、理解ができなかった。
いや、理解は出来ているけれど、意味が分からなくて────というか、理解したくなくて。




「貴方が鍵のようですよ、Aさん?」



瞬きをしてから吸血鬼のような男が淡々と口を開いて、それから私の名を出した。

自然と脚がふらついた。
身体が、阿呆なことを言うんじゃないと言っているみたいに。



「今の出題で分かるだろう。
自己紹介にしろ…いいや、今まで全部だな」

「まあ実際、彼の言う通りだと思うよ」



これが、天才たちには飲み込める状況らしい。
首謀者は一体私とどんな関係で、その上何を考えているのだろうか。

分からない。ぐるぐるとした頭の中で氷のようた透き通った地面を見詰めた。扉はちっともあきやしない。

苦虫を噛み潰したような
けど、弱々しく曇るなんとも言えない表情の私は、小さく息を吸う。



「……本気で言ってます?」



あっさりとした彼らを置いて
静かな空間に、私は問うた。

閉ざされた扉の紙切れには、私が澁澤龍彦の膝に座ってから既に文字が浮かんでいる。

ぼんやりとしていて、詳しい指定もない。
外れたら繰り返し行う羞恥。
それもこいつらは、私が関係すると最終決定を出したじゃないか。




「……手の甲にキス、って、私が、やるんですか」




縋る先もなく何も無い空間に問えば、3人の視線が空中で交わっていた。

次の課題を前にして
なら、この扉の中にいたままでいいと初めて思う。
あわよくばもう眠りにつきたい。

だってあの太宰さんが、目の前で微笑んでいるから



「まあやってみようじゃあないか」



高い背を前にして影がかかる。
その前にしゃがんだ太宰さんは、何故か手のひらを私に差し出していて、狼狽える私に言う。


「さあお手を、白雪姫」

011:課題の謎→←009:膝の上



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 骸砦組   
作品ジャンル:恋愛
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三斗(トリップ願望者) - 更新をお願い致します!(土下座)楽しみにしてます! (2022年6月23日 0時) (レス) @page11 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
太宰治 - この作品大好きです!お忙しいかもしれませんが、是非続きが読みたいです! (2021年3月26日 10時) (レス) id: 09b07293c3 (このIDを非表示/違反報告)
白壇 - 言葉選びも展開も面白いです!好きです!!抱いて((天才ですか!?お忙しいのだと思いますが、是非続きが読みたいです…! (2019年11月27日 1時) (レス) id: 42869b6ef5 (このIDを非表示/違反報告)
宰原叶(プロフ) - 専門学生はつらいよさん» いえいえ!頑張ってください!! (2019年8月17日 21時) (レス) id: a120f73047 (このIDを非表示/違反報告)
Regulus(プロフ) - いえいえ(* ´ ▽ ` *)これからも更新楽しみにしてますね!無理しない程度に頑張ってください(*≧∀≦*) (2019年8月17日 20時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:社畜 | 作成日時:2019年8月7日 10時

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