71話、桜、ひらり ページ29
実弥side
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桜の木の下、俺の隣にはAがいる。
咲き誇る桜も劣る程の、愛おしい人が。
家族も失い、お袋を殺した俺の色褪せた世界を、Aは再び色付けてくれた。
ー姉貴と幸せになれよ…不死川。
天野。今まで散々睨み合ってきたのに俺達を庇い、挙句こんな言葉を遺して逝きやがった。
ー俺はお前に自分の人生を諦めてほしくないんだよ
匡近。可愛くねぇ弟弟子だったろうよ。俺は。
けどお前は俺の心配しかしねェ。…このお人好しが。
ー兄ちゃんには幸せになって欲しい。
玄弥。「俺達2人で家族を守る」と言ってから、知らず知らずの内にお前にも沢山の事を気負わせちまってた。だから鬼殺隊に来たんだろ?ごめんな。こんな酷い兄ちゃんで。
ー辛かったろうに。もう良いの。幸せになるべきじゃないなんて考えないで。実弥は自慢の息子よ。
無惨を倒した後、あの世の入口で会ったお袋。
なァお袋、貴方を殺したのは俺なのに。楽な思いもさせてやれなかったのに。でも…あんたの声が聞けて嬉しかった。
こんな俺に幸せになる権利は無い。一生、大切な人の為に鬼を狩り続ければ良い、そう思っていた。
なのに、何故。
皆口を揃えてやれ幸せになれだの何だのって。
…ったく、こんな俺に。
分かったよ。心配しねぇでゆっくり休んでくれや。
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第三者side
ふとAが横を見てみると、実弥の頬を一筋の涙が伝っていた。こういう所、本当に脆くなったなぁとつくづく感じる。彼は…否、皆今まで無理に張り詰めていたのだから、当然と言えば当然だ。
彼女の視線に気付いたのか、実弥はバツが悪そうに頭を搔く。
実「…A」
彼は目の前の恋人を抱き寄せ、その肩に顔を埋めた。一応、彼なりに甘えているのだ。
AもAとて実弥の頭を撫でながら、柔らかな頭髪の心地良さに目を瞑った。
好きな人の匂い程安心するものは無いだろう。
実弥の懐からは保湿くりぃむの柚子の香り。
Aの項(うなじ)からは桜の香り。
しのぶと蜜璃に贈られた香水、使ってるらしい。
彼女の髪は下ろされ、風にサラサラとなびく。それを大事に大事に撫でながら、
実「愛してる」
実弥は掠れた声で言った。
切なくて、悲しみを含んだような声色で。
Aも彼の背中に回した腕にキュッと力を込め、
「ありがとう。私も愛してるわ。」
噛み締めるように言った。
2人を他所に、ひらり、またひらりと桜は舞う。
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韓国海苔ごはん(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» ありがとうございます!それとご指摘ありがとうございます。ほんっと困るくらい見落としが多いのでとても助かります…しかも槇寿郎さんが好きとはなんと渋い!! (2021年4月5日 10時) (レス) id: 23bf08a048 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - 完結おめでとうございます!とても良いお話だったと思います(*^_^*)・・・それと すいません、あとがきの所の槇寿郎さんの名前の(槇)の字が(槙)になってます・・・ (2021年4月4日 15時) (レス) id: c50ca7ded5 (このIDを非表示/違反報告)
韓国海苔ごはん(プロフ) - 浅葱さん» ありがとうございます! (2021年2月6日 9時) (レス) id: 23bf08a048 (このIDを非表示/違反報告)
浅葱(プロフ) - 続編移行おめでとうございます!これからも頑張ってください! (2021年2月5日 21時) (レス) id: 11ffe6e997 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:韓国海苔ごはん | 作成日時:2021年2月5日 21時