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耳を澄ませてみると、見合いの話なんてあったかと確認する声や、アデリーナさんの良くない噂話が聞こえてくる。
それでよくよく考えてみれば、そもそも僕とボンゴレの結びつきなんて恭弥がいれば充分あるって気付いて、そっと恭弥の手に自分の手を重ねた。
「ね、恭弥。ちょっと冷静になろ？」
「僕は冷静だけど」
「ほんと？だって、考えてもみてよ。リボーンから報告を受けてる9代目が僕にお見合いなんてさせると思う？」
そう言った途端、優勢だったアデリーナさんは言葉を途切れさせる。半ば口論に発展しかけてたものも水を打ったように静かになって、確信に変わった。
「僕もさっき気付いたんだけど、あるわけないんだよね」
「そ、そんなの分かりませんわ。男性同士がいつまで続くか信用できず、苦肉で出した策かもしれません」
「うん、それもあるかもしれない。だけど、僕は初対面の君が言ったことを鵜呑みにしたくない」
できるだけ穏やかに微笑んで、アデリーナさんを見る。
「お見合いが来たら断るし、君の提案は聞かない。結びつきが大事だというのなら、放っておいて」
顔を真っ赤にさせたアデリーナさんは無視して、ジェンマさんに会釈をして恭弥の腕を引く。
せっかく美味しいもの食べようって気分だったのに、台無しだ。このまま帰ってもいいけど、人目があるところで能力を曝け出すような真似はしたくないし。一旦バルコニーで休憩して帰ろう。
そう思って恭弥と一緒にバルコニーに出れば、すぐさま抱きしめられてくすくす笑ってしまう。抱きしめ返して、さっきのことを話題に出した。
「びっくりしたね。強かだって褒めればいいのかなぁ？」
「気に入らないからやめてくれる？」
「んふふ、はぁい。……それにしても、ジェンマさんは優しいね」
「は？」
低い声と鋭い目が向けられる。まあ、アデリーナさんと一緒にいた時点で恭弥の中で敵と看做したのかもしれないけど。
「周りがお見合いの話を聞いたことないって話してたの教えてくれたから、僕も冷静になれたんだよ」
「……そう」
「お見合い、嘘でよかったね」
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
