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「ノンアルコールのドリンクはこちらですわ」
そう声をかけられて目を向けると、毅然とした目つきをしている女性と、その後ろに隠れるように怯えている女性。恭弥と目を合わせると、凛々しい女性が口元に笑みを浮かべた。
「自己紹介をしても？私、アデリーナ・ドゥランテと申します。こちら、ジェンマ・ファッブリさんです。私たち、両親がマフィアなんです」
「よ、よろしくお願いします……」
流暢に日本語を操って堂々たる姿は自信に満ちていて、隣にいる女性がみっともなく見えるほど。仕組んでやっているのなら、さすがだとしか言いようがない。
それはともかく、何の用かな？恭弥の機嫌がどんどん悪くなっていってるから、早めにお願いしたいね。
「お二人は恋人、でよろしいかしら？」
つんとそっぽを向いたままの恭弥に代わって頷く。すると、アデリーナと名乗った女性が少し声を落とした。
「私、父にAさんとのお見合いを勧められたんです」
初めて聞いた事実に目を見開く。ぎゅうっと腰に回っている腕の力が強くなった。そんなの知らないと返せば、アデリーナさんは頷く。
「ええ、私も数日前に聞いたばかりです。Aさんをボンゴレの傘下に入れるために、私が選ばれたようですわ」
「なにそれ」
「今日お会いしてAさんの本意ではないことは分かりました。そこで一つ提案がございますわ」
意地悪く笑ってみせるアデリーナさん。つい前のめりになりそうになったところ、恭弥が鼻を鳴らしてアデリーナさんを睨みつけた。
「見合いなんてさせないから、提案は不要だよ」
「あら。でも、ヒバリさんは名家の方と聞いていますわ。子を成せない人を家の方が許してくださるかしら？」
「あの人たちに決定権はない」
静かに怒りを滲ませて恭弥が言う。不意にジェンマさんと目が合って、困り顔をされた。不思議に思っていると、ジェンマさんがわざとらしく目線を外して周りを見る。
僕たちを遠巻きに見ている人たちはこそこそと互いに耳打ちし合うように話していた。
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
