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僕はファミリーじゃないのに、と小さく文句を言っているうちに、沢田綱吉が肩に乗ったリボーンに誘導されながら9代目の前へと歩く。
大人しくついていって、9代目と沢田綱吉が話しているのを聞きながら、周囲を窺った。懇意にしているのだろう強面のマフィアや、仲睦まじい様子の夫婦らしきマフィア。親に連れられてきたのか、年頃の女性もいた。
目だけで周りを見渡しながら、恭弥に腰を引かれてもたれかかる。ちくちく刺さる視線に含まれる意味を考えるだけ無駄だ。
あくびをどうにか噛み殺して前を見ると、9代目と目が合った。穏やかに笑いかけてくる様子は好々爺そのものだけど、これだけ強大なマフィアを率いるボスが優しいだけで務まるとは思えない。
やっぱり苦手だなぁと眉を顰めると、嫌われてしまったかなとニコニコと笑っていた。
ようやく挨拶が終わって、9代目から離れる沢田綱吉たち。それに倣ってついていけば、わらわらと人が群がってくる。10代目ファミリーに興味があるのか、はたまたコネを作りたいのか。
顔を歪めて恭弥が僕の腰を引く。そのまま歩き出す僕たちに向けられる視線はやけに熱っぽい。横目で見れば、ご令嬢たちがぽや〜っと恭弥を見ていた。
かっこいいもんねぇと頷きながら、恭弥を窺う。周囲を見て煩わしそうにすると、恭弥は僕の腰を抱く腕に力を込めた。
「5分経ったら帰るよ」
「早いね？」
「Aを変な目で見る奴がいるから」
思わず目を瞬かせる。僕を変な目で見てる人？そんな人いるかな？それは恭弥の方だと思うんだけど。
首を傾げながらそう言えば、恭弥は不思議そうな顔をした。けらけらと笑い声を上げて、恭弥にぺったり体を預ける。
僕たち、似たもの同士だね。
「ねえ、どうせなら美味しいもの食べてから帰ろうよ」
「……まあ、それくらいなら」
「やったー！恭弥は何がいい？」
白いテーブルクロスの上に並べられた軽食を見ながら、恭弥の腕を引っ張る。まずはドリンクがほしいかな。あとは〜、甘いもの食べたいから、あっちのデザートの方に行きたい。
ひとまずドリンクを選ぼうとテーブルへ寄ると、しゅわしゅわと泡が立つシャンパンや深い色合いのワインなど、アルコールばかりが目についた。
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
