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口調こそ丁寧だけどその目には懐疑が浮かんでいて、やっぱりそうなんだなぁと思ってしまう。あまり寛容的ではない時代なんだよ、きっと。まだ凹凸が普通っていう風潮なんだ。
だからといって、気持ちのいいものではないけど。
恭弥は大丈夫かなと横目で見れば、苛立ちを露わにしていた。僕なんかを選ぶから、と口から溢れ落ちそうになって、慌てて口を結ぶ。恭弥に怒られちゃうからね。
黒服に案内された控室にはスーツが2着用意されていて、机の上は1枚の紙。きっとリボーンからだろうと思って拾い上げてみれば、着替えて待つようにと指示があった。
だって、と恭弥を振り返ると、不機嫌そうなのは変わっていなくて。ふふっと笑いながら恭弥に擦り寄る。
「そんなに怒る必要はないと思うよ？」
「なんで」
「だって、あの人の価値観が古いだけだもん」
そんな人に怒る時間がもったいないって笑いながら付け足せば、恭弥はふっと目尻を緩めた。鼻を擦り寄せて優しく唇を重ねると、すっかり機嫌を直したみたいで、表情を和らげてスーツを手に取る。
ハンガーにはそれぞれ名札がついていて、ネクタイの色が違うみたい。僕のはワインレッド、恭弥のはバイオレット。ワイシャツはグレーで、ベストとスーツは黒色。上質な生地が使われているんだろうなって分かるくらい手触りが良い。
さすがマフィアで随一のボンゴレファミリーだ。こんなところにお金をかける気がしれないけど、見栄っていうやつなのかな。
手早く着替えて、控室に備え付けてあったカプセル式のコーヒーメーカーでコーヒーを淹れる。恭弥の分も淹れて手渡すと、3人掛けくらいの広いソファーに座ってホッと息をついた。隣に1センチの距離も空けずに恭弥が座って、きゅっと手を握られる。
手持ち無沙汰なのか、指で手の甲を撫でられたり、指を絡めてみたり。そんな軽い触れ合いがうれしくて、恭弥の肩に頬を乗せて擦り寄る。
時計を見れば、15時40分を過ぎたところ。あと20分弱でパーティーが始まるんだ。じゃあ、そろそろなのかなぁ。準備は終わってるし、そのうち迎えが来るんだろうけど。
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
