進級と将来と ページ22
春が来て、学年が上がる。それは中学最後の年と受験というものを連れてきた。風紀委員になった代わりに成績を約束された僕は推薦という手段を取れるのだけど。
どうしようかなと悩みつつ、早めにもらった進路希望調査の紙を眺める。一番近いのは並盛高校だけど、少しでも偏差値の高いところへいこうとすれば、並盛から離れたところに行く必要があって、いわゆる遠距離恋愛というやつになってしまう。
会おうと思えば、すぐに会う手段はあるけど。う〜ん、どうしたものかな。
「恭弥に相談……は、なんか違う？僕の進路だもんねぇ」
むうと唇を尖らせて、何よりも難しい将来を考える。
そもそも僕は働かなくても生きていける。食事は不要だし、住まいもエンティティさまの森に還ればいいから、なくても問題ない。衣類だってDBDでスキンを変えるように僕も変えることができると、この前分かったことだ。
進学する意味も働く意味もないように思えて、眉間に皺を寄せた。
生きるって難しい。普通の人ってどうするんだろう？いや、まあ、進学するんだろうけど。どうやって進学先を決めるんだろうね？目的があって決めてるのかな？
エンティティさまの信者として生きる前の僕は一度受験を経験しているのに、そのときと状況が違いすぎて全く参考にならない。
就職するしないは置いておいて、ひとまず将来に役立ちそうな……と考えたところで、将来ってなんだって考えちゃって、無限ループ。やりたいこともないから、無難なところを選ぶしかないかなぁ。
というか、恭弥はどうするんだろう？進学する気とかあるのかな？そういえば、こういうことを話したことなかった気がする。話してみようかな。
そう考えたところで、結局恭弥に甘えていることに気付いた。堂々巡りするばかりで、ちっとも用紙は埋まらない。
すぐに提出しなきゃいけないわけじゃないし、しばらく考えてみようかな。それで、困ったら恭弥に相談しよう。とりあえず自分で考えないと。おんぶに抱っこは嫌だもん。
そう結論付けて、ひとまず片付けようと用紙を手に取ったところで携帯が鳴った。見てみると、リボーンからメールがきていて、暇だったらグラウンドに来いって。
沢田綱吉と遊ばせてやるって書いてあったから、進路希望なんてすっかり頭から抜け落ちて、窓から飛び降りる。
だって、ほら、僕は将来より遊ぶことのほうが大事だからっ！
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
