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「な、なにして！？恭弥！？」
「本に書いてあったから」
「本？え……えっ？」
目を白黒させている間も、唇が鎖骨の方へ降りていく。本って僕が読んでた本？そんな場面あったっけ、と慌てて記憶を遡る。えーっと、え〜っと……。
Vネックを着ていたせいか、鎖骨を甘噛みされて、肩がひくついた。そこでようやく思い出す。恋人を可愛がるシーンで、キスだけじゃなく甘噛みも一種の愛情表現だというように書かれていた。
確か、甘噛みだけじゃなくて……。
そこまで思い出したとき、鎖骨辺りを吸い上げられて吐息が漏れる。小説と同じ展開になっていることに気付いて、ドキドキと鼓動が大きくなった。
大人しく身を縮こませて恭弥の気が済むまで待っていると、好き勝手に唇を落とされる。“真っ赤な花が咲いたように”と小説内では表現されていたけど、実際どうなんだろう？
そう冷静に考えてみたけれど、肌を吸い上げられる感覚は微弱な電流が流れるような刺激で、小さく声をあげてしまう。口を塞ごうにも手は繋がれたまま。羞恥で体が熱を持つ。
「これ、いいね」
首筋にかかる吐息で体から力が抜けた。
「きょ、うや……？もういい？」
「もう少し」
鎖骨から首筋を辿った唇はそのまま耳元へ落とされる。ダイレクトに伝わるリップ音で頭がおかしくなりそう。
「恋愛小説なんてくだらないと思っていたけど、少しは役に立つね」
「う〜〜、」
「それで睨んでるつもり？」
くすくすと笑って恭弥は僕を起こす。そのまま恭弥の膝の上へ。抱き抱えられて、こめかみや目尻にキスされた。
「仕方ないから、終わりにしてあげる」
「……何個つけたの？」
「さあ」
キスマークという言葉を口にするのも恥ずかしくて濁して聞いたけど、恭弥は知らぬ存ぜぬで答えてくれない。目を細めた恭弥が骨ばった指で首筋をなぞる。
「隠せるといいね、これ」
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
