今と未来、どっちかなんて ページ20
休日の昼下がり。少し早めの昼食をとったあとは僕も恭弥も好きなことをして過ごす時間。
だけど、今日の恭弥はそういう気分じゃなかったらしく、後ろから僕を抱き込んで何か話してと無茶振りしてきた。ええ、と声を漏らして何を話そうかと迷う。
何でもいいからと言う恭弥に、何でも良かった試しがないんだけどと文句を返した。
ちょっとでも他の人の話をしたらやきもちして。僕の好きだった人の話なんて論外だし、エンティティさまに与えられたことについて話したって不機嫌そうにするくせに。
そうなると、必然的に恭弥のことしか話さなくなっちゃう。
うーんうーんと考え込んで、ふと思い立ったのは未来の恭弥。約10年後の世界に行ったときに出会った大人の恭弥の話なら大丈夫かな。未来に支障がない範囲ならまあいっかと思って口を開いた。
「じゃあ、10年後の話するね」
「ああ、前の」
「うん。えっとねー、僕もびっくりしたんだけど、恭弥のアジトがね、大きかったんだよ」
そう言いながら、手近の紙とペンを取って図面を書いていく。恭弥の部屋と僕の部屋、広々としたトレーニングルーム。結局何に使うか分からなかった大広間。
地下に広がるそこの隣にはボンゴレのアジトがあって、と書き足したところでむぎゅっと腕の力が強くなる。けらけら笑って、紙面にアジトのマップを描いた。
「10年後の恭弥は入れてくれなかったけど、共同の寝室があって」
「共同？」
「うん。僕と恭弥が寝るところね。部屋があるところの近く。ここ」
指差して恭弥に伝えると、目を細める。後ろから顔を寄せられると、恭弥の髪がさらさらと頬を擽った。くすくす笑いながら、一通りアジトのことを話し終える。
僕の手からペンを抜き取った恭弥は図面に何かを書き足していた。
「僕なら、ここにもう一つ書斎を追加するね」
「あ、未来の恭弥も言ってたよ。手が回らなかったってぼやいてた」
「ふうん。……君は？」
「僕？ん〜、ここ。ここにトラップ仕掛けたいな」
出入り口は霧の炎で隠してあったけど、やっぱり罠がないと。ミルフィオーレの連中が上から奇襲を仕掛けてきたことも考えると、やっぱり地表に近い階層は何かしら仕掛けたいな。
「未来ってハイテクでね、侵入者用の罠も結構あったんだけど。炎のこととか考えると、やっぱり不安だよねぇ」
「そう？」
「うん。僕なら余裕で突破できちゃう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
