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背後から覆い被さるように抱きしめられて、ペンを置いてからぽふぽふと恭弥の頭を撫でる。ふうーと大きなため息をつくと、恭弥は腕を解いて僕の隣に座った。
「あのね、ハロウィンだからスイーツ作ってきたんだけど……」
「Aが？」
「うん。パンプキンタルト作ったんだ」
「進んで食事をしようとしない君が？」
意地悪く目を細めた恭弥が僕の頬を擽る。少し目を逸らして口をまごつかせた。だって、恭弥は一緒に食べてくれるもん。だから、イベントに浮かれて作ったって問題ないはずだよ。
「いつもそうなら良いのに」
「頑張ってるもん」
「そうは見えないな」
くつくつと喉で笑って僕を揶揄う恭弥。もー、と軽く頬を膨らませてみせた。機嫌をとるように撫でられると、膨らませた頬はすんなり萎む。
「そういえば、君は仮装しないの？」
「しないよー。学校はそういう場所じゃないんだから」
「へえ。草食動物はそうじゃなかったみたいだけど」
「仮装まで持ち込んだ生徒がいたの！？」
勇者かな？没収されるって知らないはずないのに。すごー、と半ば呆れたような気持ちで呟く。
「でも、全部没収したんでしょ？」
「うん。量が多かったから、教員に渡して放課後返すように言いつけたよ」
「そっか。じゃあ、大丈夫だね」
ペンを手に取って書類整理の続きをしようとすれば、頬を掴まれて色素の薄い瞳と搗ち合う。目を瞬かせてどうしたの、と言った。
「トリックオアトリート、だっけ」
「パンプキンタルトがあるよ？」
「僕が欲しいのはこっちだよ」
親指で唇をなぞられて、ぼっと顔から火が出そうなほど熱くなる。
「学校じゃちゅーしないって、言ったじゃん……」
「うん。だから、後で」
「ぅ……」
返事は、と急かされて小さく頷いた。満足そうに笑う恭弥はそのまま僕の額に口付けて手を離す。ようやく解放されたっていうのに、固まったまま動けなかった。
ハロウィンって……こんなイベントだっけ……？
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作者名：怜
| 作成日時：2023年9月2日 16時
