＊＊＊ ページ6
それもそうか。10年後には僕と肩を並べるような人なんだから。
数歩後ろに下がって、ヒバリさんを見守る。キラキラと眩い炎が膨れ上がった。それが岩に吸い込まれていく。炎が収まった頃にはブレスレットに変わっていた。
「帰るよ、A」
「え……敵の場所、聞いていかなくていいんですか？」
「それもそうだね」
そう言いつつも、ヒバリさんは窓を開け放つ。
「でも、群れるのは嫌いだよ」
「まあ、人は多いでしょうけど」
「早く」
それなら僕はどうなんだろう？2人は群れに入らないの？
はためくカーテンの向こう側でヒバリさんが僕を急かす。仕方ないなぁと思いながら近寄ると、ふと思いついたようにヒバリさんが口を開いた。
「君はどこで群れてるか分かるの？」
「え、まあ……はい」
「連れていってよ」
目を瞬かせてヒバリさんを見る。心底楽しそうに笑っているヒバリさんは僕の腕を掴んで、窓から飛び降りた。準備をしていなかった僕は空中で慌てて体勢を立て直す。
それから沢田綱吉と獄寺隼人、笹川了平とリボーンを標的として、『死を呼ぶ追跡者』をセットした。儀式の開始はまだ、あと数分後には始まるはず。
人より良い聴覚が僕たちがいた部屋に入ってきた人の声を聞き取る。分かりやすい、笹川了平の大きな声が聞こえてきて、それから知らない人の声で『アジトの目星がついた』という言葉が聞こえた。
その間に着地して、ヒバリさんを睨む。
「飛び降りるなら言ってくださいよ」
「君なら問題ないだろ」
「それはそうですけど！」
プンスコと擬音がつきそうなほど分かりやすく怒ってみせたのに、ヒバリさんは意に介さなかった。ため息を飲み込んで、上から聞こえる声に耳を傾ける。
足音が遠ざかっていって、そろそろかなぁとパークを発動させた。歩き出す僕の腕を掴んだままの手を見下ろして、首を傾げる。歩きづらいなぁ。どうしようか？
僕の視線を追ったヒバリさんが腕から手を離して、するりと指を絡めた。手の甲を時折触れ合わせて、指だけを絡めて。触れ合う温度がくすぐったい。じわじわと熱がのぼってくる。
落ち着かないけど、優しい体温に絆されて、何も言えなかった。
なぜだか、ヒバリさんの方を向いていけないような気がして、オーラだけを視界に収める。数秒視えたオーラの行方を追って、歩みを進めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2023年2月20日 23時
