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*** ページ35

「まったくもって信じられません。まさか重傷を負ったはずの山本武が目の前に立っているとは」

「とっくの昔に死んでるはずの亡霊みたいなあんたが言えることかよ」

「幻覚というわけでもなさそうだ……」

「助けられたのさ、知り合いにな」


知り合い?山本武にしては曖昧な呼び方だね。彼、一戦交えれば友達って思ってそうじゃない?だからこそ、知り合いって称するのは違和感がある。

……ん?瀕死の重傷を動けるまでに回復させる技術、友達ではない関係……あー、うん。心当たりあるかも……。
白蘭かな。パラレルワールドで得た知識を山本武に使ったのなら、何ら不思議じゃない。だけど、白蘭が快く手を貸すとは思えないんだよねぇ。


「お前達を消す計画が少々狂いましたが、狂った計算はまた戻せばいい。自らの手で」

「面白え!そうこなくっちゃな!!ひさびさの実践でワクワクしてるぜ!!」


VGも持ってきていたのか、山本武が見せたのはネックレスだった。形態変化をした山本武の力量はどうだろう。元々運動神経も良かったし、パワーアップした今、どれくらい遊べるのかな。


「見掛け倒しでないことを願いますよ!!」


そう言うD・スペードが山本武に肉薄する。鍔迫り合いに持ち込まれた山本武の後ろから這い出た刃を、水野薫が体で受け止めた。


「……武……お前なら……避けられたかもしれねえが……オレ……お前によお……借りを返してえんだ!!」

「バカヤロ!!」

「勝敗が決した」


復讐者が水野薫を拘束する。


「何をする復讐者!!薫はまだ何の誇りも懸けて戦っていない!!」

「しかし、この男の“誇り”は折れている。よって水野薫を敗者と認める」


もう彼は戦うことを選べない。それが致命的だ。水野薫からも語られる、戦う資格がないという言葉。優しくしてくれた友達を裏切りたくないとのことだ。

その言葉で僕も考える。僕はエンティティさまの命令があれば、裏切ってしまうのだろうと。容易く息をするように、その選択肢を取ってしまう。
だけど、自らは取ろうとしないだろうな。意味もないし。

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作者名: | 作成日時:2023年2月20日 23時

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