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霧から斧を取り出そうとすれば、手首に鎖が巻かれる。その先を見やれば、復讐者の手だった。
「手出しはさせない」
「君たちごときが僕を止められるの？」
「契約を取り違えたか」
「これも、君たちとは違う契約だよ」
復讐者と睨み合っていれば、いつの間にか霧の結界が張られていた。ああ、もう。うまくいかないなぁ。
もういいよ、と霧から手を離せば、鎖は消えていく。腹立たしいけど、クロームのことは六道骸がなんとかするでしょ。僕は知らない。
「霧のカーテンを壊せば、大変なことになりますよ。決して強固とは言えぬ結界だが、破られれば──自動的に彼女は死ぬ」
クロームが死にかけたら、六道骸が来るだろうけど。今、そんな気配はないね。こちらに来れない事情があるとか？
どうやらクロームにはマインドコントロールがされているみたいだし、主導権がないと実体化は難しいのかもしれないね。
力を振り絞った水野薫がD・スペードの脇腹をパタのようなもので刺す。だけど、効いていないようで、振り払われてしまった。
「水野薫って人……殺されちゃう……！！」
「ですが、10代目！！あの野郎は山本の仇です！！」
「その点は感謝していますよ。おかげで沢田綱吉の雨の守護者を楽に消すことができた」
振り下ろされる鎌。それを受け止めたのは剣だった。重傷のはずの山本武が剣を持って、鎌を受け止めたのだ。
「や……山本ォ！？」
「すまねえツナ！出遅れちまった！！」
幻覚じゃない、本物だ。重傷を負ったはずの山本武がどうしてここに？
鎌を薙ぎ払った山本武が水野薫に振り返って声をかける。
「な……なぜだ！！なぜ助けた！？オレはお前を殺そうとしたんだ！！なぜ助けた山本！！」
「…………何言ってんだよ。本当に困ってる時に助けてやれるから、友達なんじゃねーか」
涙を流す水野薫。折れたなと直感した。彼はもう山本武に刃を向けることはできない。それはつまり、この戦いにおいて敗者を意味する。勝負はついた。次の『鍵』は何かな。
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作者名：怜
| 作成日時：2023年2月20日 23時
