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冷静じゃなくなっていくヒバリの隙をついて、Aが攻撃を仕掛ける。棍棒が脇腹にクリーンヒットし、吹き飛んでいくヒバリの口から血が溢れた。痛みから歪む顔。
薄目で見えたAは深追いせず棍棒を回して遊んでいる始末。
「ムカつく」
ぼそりと呟いた言葉はAに届いたのか、苦笑されてしまった。それがまた苛立ちを助長させる。
まだまだ届かない。そう理解していてなお、願ってしまう。もどかしいやら、憎たらしいやら、ペースを乱されているのはヒバリだけだ。
欲しいと面と向かって言うためには、まだ遠い背中に追いつく必要があるというのに。その後逃げられたとして、捕まえられるほどの実力が必要だというのに。
落ち着くために深呼吸をして、トンファーを握り直す。一矢報いることがどれほど困難なのか分かっていながら、武器を手放すことはしなかった。
「
首を傾けたAがヒバリにそう問う。嫌味を含まない純粋な疑問がヒバリを冷静にさせた。
どこまでいっても、Aは戦いを楽しんでいる。成長を続けるヒバリと戦うことを好んでいる。こちらの気持ちなど関係なく、ただただ純粋に。
ヒバリはその期待を裏切れない。好きだからということだけではない。己も同じ戦闘狂だからだ。
「ロール、」
ヒバリの斜め上でロールが鳴き声を上げる。パワーアップした
形態変化を終えたヒバリの服装が変わっていることに気付いたAがその姿をじーっと見つめる。学ランの裾が伸びて、背中には『風紀』の二文字が鎮座していた。
「じゃあ、僕も」
棍棒を手放したAがナイフを取り出す。それはタルボから渡されたかつての信者の武器だという代物だ。
「うん。しっくりくる」
何度か握りしめたAが頷く。仕込みトンファーとハンティングナイフではリーチが違いすぎる。しかし、気にする素振りは一切ない。むしろ自分の武器を漸く得たのだと嬉しそうだった。
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作者名：怜
| 作成日時：2023年2月20日 23時
