【REBORN!】エンティティさまが僕を消すまで -5-【DBD】 (ページ36)

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無言のまま敵のアジトに潜入する。明確に線引きしたあのときからヒバリさんから感じる感情は僕を揺らがせるには十分すぎるほどで、だから何も言えなかった。何かを言おうとすれば、縋りつこうとしてしまうから。
そんな弱さはいらないんだ。僕に、エンティティさまの信者に。愛されたいと、愛したいのだと喚く弱者は消えてしまえばいい。

深呼吸をして、弱者は心の奥底に押し込んだ。今から戦うのに、そんな感情に囚われる愚者はいらない。僕はただエンティティさまのために前に進めばいい。それだけだ。

さあ行こうと前を向けば、囁きが聞こえた。エンティティさまの声が。

【……A】

バッと声のする方へ振り返った。遠くから微かに聞こえる声。エンティティさま、と掠れた声で呟く。そんな僕をヒバリさんは訝しげに見ていた。

エンティティさまが呼んでいる。エンティティさまが僕を。どこ、どこにいるんですか。エンティティさま。

後ろから僕を呼ぶ声には応えず、ただひたすら走る。走って走って、エンティティさまの声がするほうへ。だんだんと近くなる声に応えたくて、ただただ会いたくて。こんな迷いを抱えた僕を殺してほしくて。エンティティさまに会えれば、弱い僕を消してくれると確信していたから。

だから、分からなかった。気付かなかった。エンティティさまの声が僅かばかり固くなっていたことに。

【A、】

「エンティティさま！」

【……止まりなさい】

ぴたりと足が止めた。すると腕が引っ張られて、頭上でまとめられる。視線を向けると、二の腕まで絡みついた有刺鉄線が手首を貫通していた。
トゲが食いこんでしまって、皮膚が捲れて血が滴り落ちる。焼け付くような痛みに悲鳴を上げそうになって歯を食いしばった。

なぜ、どうして。どうしてエンティティさまが悲しそうなの。まるで、本意じゃないみたい。これは僕への罰だと言ってくれないの。そう言ってくれないと、僕が迷ったままになってしまうのに。
弱い信者はいらないのだと言ってよ、エンティティさま。ねぇ、エンティティさま。僕、弱くなってしまったんです。あなたが殺してくれないと、弱者が息をしたままなのに。

【眠りなさい】

その一言で意識が遠のいていく。エンティティさまの触手が僕の体を支えてくれたことだけはハッキリと感じていた。