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後ろから奇襲を仕掛けようとする間抜けには振り向きざまに首を掻き切って、正面から突っ込んでくる阿呆には蹴りを食らわせる。
爆発したリングに動揺する敵に手斧をいくつか投げて、また乱闘を続行させた。集団にはドクターの電撃を浴びせて動けない間に首筋を切り裂く。頭から血を被ったかのように全身が血塗れになっていく。
途中で殺していいんだっけと考えたけど、考える時間が惜しくてどうでも良くなった。死体が積み上がるか、気絶した体が転がるかの違いだ。考える方がバカらしい。
能力をアーティストのものに切り替えて、カラスを飛ばす。アーマーを啄まれて、破けたところにカラスが殺到していた。肉を突く湿った音と悲鳴が上がる。振り払おうとした敵は結局目玉を食べられて発狂していた。
また能力を切り替えて、エクセキューショナーの大鉈を振り回す。体が真っ二つになった者や、腕が吹き飛んだ者、片足を失って地面に平伏す者。ああ、楽しい。
時間の感覚がなくなって、ゆらゆらと霧が立ち上る。カラスが鳴いている。僕のステージがすぐそこに迫ってくる。その変貌が間近になったところで、敵はいなくなった。
もう少しだったのに、と何かが囁く。立ち竦む僕にヒバリさんは少しだけ笑った。
「返り血塗れだね」
「……そう、ですね」
「冷静になったかい」
きょとんと目を瞬かせる。冷静？僕はずっと落ち着いていたはずだよ。考えてもヒバリさんの言葉の意味が分からない。首を振って思考を押しやると、血のベトベトした感触が気持ち悪くなってくる。
どうにかならないものかと体を見下ろせば、黒い霧が足元から這い上がって血を食べていった。頭のてっぺんまで綺麗にしてくれて嬉しくなる。
くすくす笑ってヒバリさんの元まで歩けば、床の血溜まりが跳ねて靴が汚れた。
「勝負、どっちが勝ちですか？」
「さあ。君、数えてたかい？」
「数えてないですよ」
そんな面倒な、とおどけて言えば、ヒバリさんも笑う。勝負の行方はどうでもいいか。勝っても負けても何かがあるってわけでもないし。
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作者名：怜
| 作成日時：2022年10月24日 23時
