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納得していなさそうなヒバリさんはそれでも追求することをせずに、僕に紙を渡した。これ、全部敵アジトの情報なんだ。図面に内部の施設、丸い装置？これはなんだろう？
六道骸が送ってくるのなら、重要なものに間違いないと思うけど。
「それから、君の特訓は終わりだよ」
「えっ？」
「これ以上は鍵が必要になるんだ。Aが唯一僕にも教えてくれなかったことだよ」
鍵が必要？僕がヒバリさんに教えなかったこと？
言葉の意味を噛み砕けなくて目を瞬かせるばかりの僕を、ヒバリさんは少し寂しそうな顔をして見ていた。
「Aはね、唯一エンティティに関してだけは教えてくれなかった。それは僕が死ぬまでそばにいるためだと知っていたから、それ以上何も聞けなかった」
ゆらゆらと彷徨っていた瞳が伏せられる。
「Aは、既に答えを持っているはずだよ。だけど、僕は、あの君が嫌いだ」
少しだけ目を見開いた。あのヒバリさんがこうも苦しそうに言うのだから、あまりいいものではないんだろうなと思って、どことなく既視感を覚える。僕はあの表情を知っている気がするんだ。
思い出そうとすれば記憶に靄がかかって、意図的に阻止されているような感覚。まだその時ではないってことかな。ねぇ、エンティティさま。
ふわりと温かい腕が背中に回される。しっかりと抱き寄せられて困惑してしまった。
「あの君は、僕のものじゃなくなるから、嫌いだよ」
「……僕はヒバリさんのものじゃないですけどぉ」
雰囲気を軽くしようとわざとらしく拗ねてみせる。だけど、ヒバリさんは何も言わず腕の力を込めるばかり。
困ったなぁ。今の僕にそう言われても、どうしようもないのに。
「不満は10年後の僕に言ってくださいよ、ヒバリさん」
「それで改善されたら、こんなにムカついてないよ」
「あくまでムカついてる体なんですね」
そうですか、と呟いて天井を見上げた。体を離したヒバリさんはいつもの調子が戻りつつあるみたいで、さっきまでの苦しげな表情はない。
ちょっとだけ安堵したのは誰にも言わないよ。
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作者名：怜
| 作成日時：2022年10月24日 23時
