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きょとんとする僕に、ヒバリさんは苦々しい顔つきをする。パラレルワールドって幾つもの分岐点を経た異なる並行世界のこと、だっけ?ということは、この世界は無数に存在しているっていうことだよね?無数に存在している世界の中で、この世界にだけ僕が存在することの何がおかしいのかな?いや、おかしいのか。
それこそたくさんある世界なら、似ている世界があってもおかしくない。だから、他のどこかしらの世界に僕は存在しているはずだって向こうのボスは言いたいんだろうね。


「だからこそ、あれは君に執着している」

「この世界でしか手に入れられないから、ですね?」


頷いたヒバリさんの表情は憎悪で塗れていた。その表情が僕が悟った事実を裏付けるようで、目の当たりにしたくなかった真実を受け入れるしかない。だけど、今はどうにも受け入れがたくて、あとでしっかり対処法を考えようと思考を放棄した。それから時間を持て余さないためにも別のことを考えることにする。

そうだ。どうしてこの世界にしか僕はいないんだろう?何が分岐になったんだろう?例えば、エンティティさまの存在かな。

エンティティさまがこの世界に興味を示さなかったら、大昔に誰かを連れ去るということもなかった。例え連れ去ったとして、誰かに目撃されることがなければ、あの村はエンティティさまのことを知らず、今日この日までもあの村が消滅することはなかった。見られていたとしてもエンティティさまの鉄槌が無事に終わっていれば、そもそも偽者が生き延びることもなく、僕が来る理由もなくなる。
なるほど、元より確率が低いんだね。


「それで、ヒバリさん。僕の特訓って何をするんですか?」

「……炎に慣れること、それからパークの複数使用を完成させることだよ」

「パーク、って……ああ、やっぱりいいです。なんでって聞くのも時間の無駄な気がします」


もう10年後のヒバリさんは僕のことを全て知っているってくらいの気持ちでいた方がいいんだろうな。キラーの能力も、付加能力であるパークも、なんなら僕がエンティティさまに仕えるに至った経緯すら知っててもおかしくない。僕の体質についても知っているのなら、それこそ全部知られてても変じゃないよ。

ため息をつきたくなる気持ちを堪えて、早速特訓を始めようとすれば、ヒバリさんは首を振る。

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作者名: | 作成日時:2022年10月11日 19時

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