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「ここ、10年後の世界ですか？」
「理解が早くて助かるよ。その様子だとだいぶ炎も抜けたようだね」
「炎が抜ける……？」
オウムのように繰り返す僕に、ヒバリさんはただ頷くだけだった。まるで自分で考えてみろと言われているような気がして、思考を動かす。
炎が抜ける。まず炎って？僕が知っているのはこの世界特有の死ぬ気の炎だけ。まるで生命エネルギーをそのまま炎にしたような……。
うん？うーん……ああ、なるほど。簡単なことだ。
僕の身体には生命エネルギーなんて存在しない。死ぬ気の炎と呼ばれるものだってない。だから、それに対する耐性なんてものもない。そんな人間が急に炎を入れられたら？異物に反応して排除しようとするだろうね。つまり拒否反応だ。ああ、そっか。
僕の身体が急に重くなったのも、炎を入れられて拒否反応に勤しんでいたからだ。そりゃ消化不良も起こすよ。脳みそは動けと命令するけど、身体はそれどころじゃなかったんだから。命令が混雑して動けなくなるのも頷ける話だ。ということは、気絶する前のあれは炎を浴びたせい？そうでもしないと、僕の動きを止めるなんて到底叶わない話だもんね。
でも、どうしてヒバリさんが知っているの？僕の時代のヒバリさんには話したことがないはずだよ。生命エネルギーがない、なんて。
「理解したようだね」
「まあ……はい。……ところで、なんでそれをヒバリさんが知っているんですか？」
「それは……僕だからさ」
理由になってないんだけど……。そもそも、僕ならこんな自分の弱点を晒すような真似はしないはずだ。この10年で何があったんだろう？そこまでヒバリさんを信頼してる、とか？それならまあ、ありえなくもないか。
半ば強引に溜飲を下げて、それでと本題を切り出した。
「10年後は何が起こってるんですか？」
「それは後で。まずは赤ん坊に会いにいくよ」
「え……はい、分かりました」
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作者名：怜
| 作成日時：2022年10月11日 19時
