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果たして本当にそうなのかな。僕はこの目で見たから、心配はしてないよ。ゆっくりと起き上がる沢田綱吉の手袋が光を放ちながら形を変える。手袋っていうよりグローブかな。
「骸……おまえを倒さなければ……死んでも死にきれねえ」
ぶわっと噴き出す炎。オレンジ色の静かな炎だ。どことなく甘い匂いが漂い始める。その匂いに身に覚えがあって、胸の辺りを握り締めた。ずくずくと熱くなるオブセッションマーク。
まさか、まさかまさか!エンティティさまの目的はあれ?死ぬ気の炎?でも、今まで反応してないんだ。沢田綱吉の死ぬ気の炎は幾度もなく見てきた。でも、反応したのは今回が初めてだ。それに、なんだか違うんだ。今までみたいに飢えるような渇きを覚えない。
どういうこと?目的は似ているけど違うものってこと?
考え込んでいる間に、沢田綱吉の戦いを見逃していたらしい。柿本千種と城島犬がダウンしていた。まあ、仕方ないよね。エンティティさまの目的が僕にとっては一番だ。
「これはお仲間の体ですよ。手をあげられるんですか?」
獄寺隼人とビアンキさんの体で突っ込む六道骸。できないだろうね。ただ躱せもしないはずだ。攻撃してるだけで負担がかかる。どうにかいなすしかない。無力化できるのが一番だけどね。
……と思ったらだ。杞憂だったかな。
「ク……体が……」
「打撃で神経をマヒさせる戦い方を直感したな」
「直感しただと?ふざけたことを!」
ビアンキさんの体も崩れ落ちる。2人の体を支えた沢田綱吉はリボーンに治療するように頼んだ。
「出てこい骸。生きてるんだろ?」
「クフフ。フッ、戦闘センスが格段に向上していることは認めましょう。だがこの程度で図に乗ってもらっては困りますね」
そうして六道骸は最後の能力について話し出す。人間道、最も醜くて危険な世界。できれば発動させたくなかったと言い、自分の眼窩に指を入れた。無理矢理回しているのだろう、血が噴き出して六道骸の顔が苦痛に歪む。
血に塗れた手が離れたとき、その目には“五”が浮かんでいた。
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作者名:怜 | 作成日時:2022年9月25日 23時