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「自分で言うのもなんだけど、被検体が脱走したってのに警報も鳴らないし、スタッフも駆けつけてこない」
「おかしいを通り越してるけど。……ひとまず、他の奴らも出してやろうか」
「ええ。頼めるかしら？」
軽く頷いてドアを破壊していく。不満そうなアズールの頬を撫でてやると、部屋から出てきたやつを気にせず、額にキスを落とされた。
スキンシップ、本当に好きだよな。俺が気にしないようになれば良いのか？
「これで全員ね」
「この一番奥の部屋、誰が入ってたんだ？どことなく嗅いだことがある魔力の匂いがするような……」
「わからない。アタシが外に出た時、すでにドアが破壊されていて部屋の主の姿は見えなかった」
「防魔素材が使われたドアを吹き飛ばすとは。かなりの魔法の使い手でしょうね。Aのような」
俺の名前は出さなくて良いって。話が飛ぶだろ。ペチン、と軽く手を叩くと、頬を擦り合わせてくる。甘えるように見られれば、毒気を抜かれてため息をついた。
「脱走した被検体の行方も気になるけれど、それより……」
「ええ。さっきからあたりに漂っている、この瘴気……」
「間違いねぇ。高濃度のブロットだ」
「……まさか、1万体以上のファントムが収容されているという『タルタロス』で問題が？」
だとしたら、この状況はまずいだろ。俺はブロットの影響を受けないけど、他の奴らは違う。大丈夫、とアズールを見れば、微笑まれる。それじゃ大丈夫かどうか分からないんだけど。
「チョーカーが外れて魔法が使えるようになってるし、魔法防御力が高い寮服に着替えましょう」
ヴィル・シェーンハイトに急かされて指を振る。ついでにアズールの着替えも済ませれば、お礼と共にキスされた。胸を押して眉を釣り上げれば、ぐっと腰を抱き寄せられる。
「『S.T.Y.X.』に押収されていたマジカルペンも召喚できました。こんなにあっさり取り戻せるなんて、なにかが起こっているのは間違いないですね」
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作者名：怜
| 作成日時：2022年1月31日 0時
