【ツイステ】エンティティさまの御心のままに-9-【DBD】 (ページ15)

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食堂から抜け出して購買部前に寄らず、オンボロ寮へ帰る。寮を占拠していたゴーストたちはあの花嫁ゴーストを祝いに行ったのか、どこにもいなかった。
荒い息を整えて、ずるずると座り込む。胸がムカムカして吐きそうだった。胃を取り出して洗ってしまいたいほど、気持ちが悪かった。

「エンティティ、さま……」

この口で、ゴーストなんかに愛を誓ったのだ。この身で、ゴーストなんかに忠誠を誓ったのだ。

ふらりと立ち上がって、シャワールームを目指す。もう戻る気はなかった。戻っても碌なことはない。

徐々に視界が潤んできて、強めに目元を擦る。脱衣所で制服を脱ぐこともせず、そのままシャワーの蛇口を捻った。
制服が水を吸って段々と重くなる。僕の今の気分みたいに沈んでいく。ああ、そっか。無駄に回る思考回路から弾き出されたのは1つの答えだった。

「ぼく、エンティティさまだけがいい」

盲信だって言われてもいい。ずっとエンティティさまを好きでいたい。僕がそれを向けるのはエンティティさまだけじゃないと嫌だ。嘘でも言いたくないよ。

鼻の奥がツンとして、上を向いた。冷たい水が温い雫と流れていく。訳も分からずわあわあと声を上げて泣いて、その先はもう覚えてない。

＊＊＊

side：NO

＊＊＊

シャワールームで糸が切れたように崩れ落ちた体を、地面にぶつかる前に支えたのは黒い触手だった。光沢のある硬そうな触手は、Aを優しく抱き上げると、黒い霧で覆い隠す。それが晴れた頃にはAの体はすっかり乾き、柔らかそうな部屋着に包まれていた。

1つの触手がシャワールームの扉を開けて、他の触手がAを運び出す。物陰から覗き込むオンボロ寮のゴーストには目もくれず、そのままAの自室に運び込むと、整えられたベッドにそっと置いた。
赤くなった目元に触れた触手は労わるように頭を撫で、布団をかける。それから辺りを見渡すような仕草をした触手は、小さく丸まった信者を繭で覆うように囲ってしまった。

さながら、子を守るための外壁のように。何人たりとも触れさせない気迫があった。