＊＊＊ ページ21
あれから幾月と時間が過ぎた頃。彼女が選択した未来の通りに事が進んだ。オールマイトが緑谷に個性を譲渡し、緑谷は雄英高校に入学するという未来。『僕のヒーローアカデミア』の原作通りの未来だ。
彼女はそれを知らないが、一番良い未来だと視た。
そして、今日。敵連合としての最初の仕事だ。カリキュラムを盗み、オールマイトが授業に参加する今日、彼女はもう一度未来を視るために重い腰を上げた。
最初は生徒を散り散りにし、戦力を削ぐ。そして1人の教師をボロボロにし、オールマイトの個性を受け継ぐ緑谷を彼女は視た。そして、少女は感嘆のため息を漏らし、残念そうに、或いは可哀想な者を憐れむように緑谷を吹き飛ばす。
「なんでこいつにやったんじゃろう？もっとマシなんおらんかったんかな」
「な、にをっ……！」
「オールマイトの個性」
ひゅう、と息を呑む音。目の前で銀朱に染まった瞳が嘲るように歪んだ。
緑谷はその瞳に魅入られる。ただただ綺麗だった。何も知らないような、何者も受け入れないような、冷たい目が惹きつけてやまない。
「どうしてお前なんじゃろうね？扱いきれんの渡されても困るじゃろ？」
「貰ってあげようか？それ中身もあるけん、じゃじゃ馬よ」
「苦しいんじゃったら、おいで」
ニタリ、と笑う彼女は何よりも美しい。精巧に作られたドールのような顔が人間味を押し出して笑えば、人は狂わずにはいられない。
「もう大丈夫。私が来た」
怒りに満ちた声が響く。少女の目が逸れて、緑谷は我に返った。嫌な音を立てる心臓。もう少しで頷いてしまうところだったと後悔する緑谷は、すでに彼女の興味から外れていた。
「あ──……コンティニューだ。A」
「命令せんで」
「まだ何も言ってないだろ」
銀朱に黄色が混じり、瞬きをすれば刈安の色に変わっていた。きゅうと瞳孔が縮まり、彼女はオールマイトを見る。そして再度未来を視れば、彼女の選択は確実なものへと変わった。
「ヒーローは地に落ちる」
世界に見捨てられた大罪人は、世界を壊す決意をしたのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 867人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜(プロフ) - そこら辺の石さん» ありがとうございます！そう言っていただけると京極ちゃんも喜ぶと思います。またどこかの作品でお会いしましょう！ (2022年12月17日 0時) (
レス) id: 37b3e8feed (このIDを非表示/違反報告)
そこら辺の石 - あの、好きです。泣きましたいや、ちょ、本当好きです。喉を圧縮されたような悲しみです。おま、主人公お前、まだまだやり残したことあるだろうわ、すみません泣きましたありがとうございました完結おめでとうございます…！ (2022年12月15日 16時) (レス) @page39 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - レン。さん» ありがとうございます！ワンピースは書きたいんですが、ひとまず他の長編が落ち着いたらかな〜と思っています。気長にお待ちいただけるとお待ちいただけるとありがたいです！ (2022年9月1日 0時) (レス) id: 37b3e8feed (このIDを非表示/違反報告)
レン。(プロフ) - ワンピース、、、ぜひ見たいです。凄く読みたいです…!!完結おめでとうございます！！ (2022年8月29日 1時) (レス) @page39 id: 009cff3277 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜
| 作成日時：2021年9月26日 5時
