魔力よりタバコをくれ 十二本目【ツイステ】

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「行きましょうか」

「うん。おどかしてやろう」


アズールがそう言って薬品庫に入っていく。俺も寮生を連れ立って入れば、騒いでいるマジカメモンスターがこっちを向いた。


「困りますねえお客さん……」

「だ、誰？ナイトレイブンカレッジの生徒っすか？」

「はい。同時に、ここの管理を任されている者です」

「見回りしに来たんだけどさ。そんなにその水槽に近付くなよ」


そう言ってまた一歩近付く。マジカメモンスターはびくり、と肩を揺らした。顔を見合わせて不安げに視線を彷徨わせるのが面白くて笑わないようにするので必死だ。
そんなに怯えなくてもいいのにな。


「水槽の中にいるのは、いわく付きの人魚。見学するのは自由ですが……どうかくれぐれも刺激しないようにしてください。呪われても知りませんよ」

「い、いわくつき……？」

「そ、いわく付き」


オウム返しのそれに頷いてやると、さらに挙動不審になる。アズールにスポットライトが当てられて、マジカメモンスターは魅入られるようにアズールを見つめた。
スポットライトは人の関心を引くのに便利だな。

そう思いながら、少し離れる。次の指示を出すためにハンドサインをすれば、寮生がはけていった。


「ご存知でしょうか……その昔、珍しい人魚のマミーは非常に重宝されていました。折れた骨を一瞬でくっつけたり、傷痕を消してくれたり、解熱剤になったり、腹痛を治したり……」


「万病に効く薬になると信じられていたんです。迷信にすぎないのに、愚かな話ですよね」


「マミーにされてしまった人魚たちは当然人間を強く恨みました……」


「凶悪なゴーストとなって復讐を始め、手に負えなくなった人間たちはやっと己の過ちに気付き……命からがら、人魚の怨霊をこの魔法の水槽に閉じ込めたのです」


「絶対にこの水槽を傷付けてはならない。学園に伝わるその教えを守るために僕たちは……厳重に！細心の注意を払って！指紋1つつけないように！」


「……とーっても気を付けているんですよ」


スポットライトは消えて、辺りは元の明るさを取り戻す。今にも逃げ出しそうなマジカメモンスターはどもりながら相槌を打った。

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