魔力よりタバコをくれ 十一本目【ツイステ】

＊＊＊ ページ27

4人で薬品庫に戻る。俺も着替えていることに驚いたのか、一様に目を見開く。集中する視線が嫌になって顔を顰めた。


「ふふふ……僕たちの仮装のテーマは……“マミー”です」

「もしかすると『ミイラ男』と言ったほうが伝わりやすいかもしれませんね」

「Aさんお似合いです！！」


監督生が手を振るから視線を投げる。それだけで嬉しそうにするから、よくわからないな。

アズールに腰を引かれてぴったりと身を寄せられる。監督生からアズールに目を移せば、少し不機嫌そうだった。
監督生嫌いはまだ直ってないか。マシになったかな、とは思ってたんだけど。そんなこともなかったな。


「せっかく今年は、アズールと僕がハロウィーンの運営委員になったので……人魚とは正反対の、干からびたマミーの仮装をしたいと決めていました」

「マミーの仮装なんて海じゃぜってーできねぇし。オレも大賛成」

「しかし、ただ身体に包帯を巻き付けるだけでは面白くない。そこで、従来のマミーの古臭いイメージを覆すスタイリッシュなコーディネイトを目指しました。Aにも着てもらう予定でしたので、かなりこだわりましたよ」

「そんなことで粘ってたわけ？まあ、いいけど。……飾り付けのテーマは“マッドな研究者のラボ”。水槽は『培養槽』をイメージして、夜にはライトアップされる予定。マネキンを中に入れるから、かなり雰囲気は出る」


カリムが褒めるから、どことなく鼻が高くなって微笑む。頑張った甲斐があったよ。想定外なこともあったけど、なんとか丸く収まったし。
まあ、本番はこれからだから。これで満足なんかしてられない。全部業者の人にも手伝ってもらって仕上げたんだ。一般の人にはどこよりもオクタヴィネルが良かったって言ってもらわないと。


「……あれっ？でもさ、会場設営と衣装の予算はどの寮も同じ金額で決まってなかったっけ？」

「はい。限られた予算の中でやりくりするのも学園生活ならではの楽しみですからね。ポケットマネーを使ってないか、予算をオーバーしてないか、妖しいお金の動きはないか……会計係のジェイド・リーチくんにしっかり見張ってもらってます！」


会計係がジェイドなら、不正はできないだろうし。人選はいいと思うよ。それで……、カリムはなにが言いたいんだ？


「だよな。それなのに外部の業者なんか使って大丈夫だったのか？」

＊＊＊→←＊＊＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す