悪魔の番外編【ヒロアカ】 (ページ6)

今日:12 hit、昨日:13 hit、合計:63,233 hit

Ver.夢主が敵だった：Part1 ページ6

この世界は可笑しい。人の“個性”を嘲笑い、“個性”がない者は迫害される。

わたしもその1人だった。詰られ、嘲笑の対象にされ、唯一味方をしてくれそうな家族はわたしを捨てた。

寂しかった。
誰も隣にいてくれないことが。

悔しかった。
何も言い返せないことが。

腹が立った。
人の“個性”を嗤う奴らが。

今でも鮮明に思い出せる、あの日の出来事。
いつも通り学校で笑われて帰って、家に入る前。珍しく両親の声がして、ちょっとだけ“個性”を使ってみた。
“個性”を使っちゃいけないのは知っていたけど、それでもなんだか気になって。ほんの少しだけ使ってしまったんだ。

『ねえ、あの子どうするのよ』
『あんなバケモノじみた子供なんか育てたくないな』

衝撃だった。当時のわたしには両親だけが頼りだったから。そんなことを言われるとは思ってなくて。

両親がいる喜びからわたしを否定された悲しみへと、笑顔から絶望の表情へと、変わっていく。

その続きは聞けなかった。きっと防衛本能なんだろう。小さい頃のわたしは走っていつもの公園に行っていた。悲しい時にいつも行っている公園へ。
そうして数時間が経っても両親は迎えになんて来なかった。真っ黒な闇が辺りを支配しても、わたしを探しになんて来なかった。

その時漸く理解出来た。わたしはバケモノなんだと、いたら迷惑になるのだと。

涙が溢れる。小さいわたしには耐えきれない程の哀しみだった。唯一の支えさえ、わたしのことを忌み嫌っていたのだ。
自己嫌悪の無限ループを抜け出せず、ベンチに丸まってひたすら泣くわたし。

その悲しみの淵から救ってくれた人がいた。

『大丈夫かい？先生のところへおいで』
『きっと弔も歓迎してくれるよ』
『悪魔？素敵な“個性”だね』

カミサマだった。誰がなんと言おうと、先生はわたしのカミサマだった。

『餓鬼は嫌いなんだよ』
『先生が言うから仕方なくだ』
『お前なら……別にいい』

最初は嫌がっていた弔も、優しくしてくれて。

こんなに優しい世界があるなんて思わなかった。嬉しかった。

ねえ、だから。

精一杯の恩返しをあなた方に。

わたしを救ってくれたカミサマたちに。