悪魔の番外編【ヒロアカ】 (ページ32)

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Ver.死穢八斎會と遭遇した：Part7 ページ32

｢俺は依然ルミリオンだ！！｣

どうして、そこまでやれるの。“個性”だってないのに、守らなきゃいけないのに。視界が滲んでよく見えない。

ヒーローってやっぱりかっこいいなあ。

それから約5分、ヒーローはわたし達を守り抜いた。もうボロボロで、満身創痍なのに。

｢治崎ィ！！｣

｢その名は捨てたと、言ったハズだ｣

ぶつかるその瞬間、ボコリと壁に亀裂が走る。そこから出てきたのは緑谷くんだった。相澤先生も続いて入ってくる。

｢ナイトアイ、確保を！！｣

｢後…ろにいます…降魔さん…も…｣

床を叩くオーバーホールさんの“個性”は発動しない。相澤先生が消しているんだ。わたしに出来ることは…。

｢起きろクロノォ！！｣

あれはわたしが誘拐された時の…！じゃあ、今相澤先生は動けない！
相澤先生の“個性”が解けたのか、オーバーホールさんは“個性”を使って、再び棘を出した。その拍子にわたしはオーバーホールさんの元へと飛ばされてしまう。わたしと一緒に音本さんが降ってきた。

｢おかえり、A。まずは治してやろう｣

優しく頬に触れられて、一瞬の痛みと共に暗転。そしてすぐに視界が明るくなる。頬の傷も、足の穴も、綺麗になくなっていた。

唖然としていると、オーバーホールさんは音本さんを掴む。そして自分と一緒に分解、修復をした。

｢さァ、壊理を返してもらおうか｣

緑谷くんがオーバーホールさんの相手をする。少し見ないうちに逞しくなった緑谷くんを見て、ひどく心が揺れた。羨ましい、と思ってしまった。わたしもそうなりたかったのに。

いらないことを考え始めてしまう自分が嫌で、俯いてしまう。激しい音が思考を加速させた。

ヒーローになれない。“個性”もない、足でまとい。なぜ、わたしだったの。

いつの間にか、わたしの周りには檻ができていた。地面と同じ材質で作られたそれは、オーバーホールさんがやったものだろう。
どこまで執着しているんだ。ひたすらに鍛えた身体能力だって、“個性”だって、今のわたしには無いに等しいのに。

どんどんとネガティブなことを考えてしまう。いっそのこと消えてしまいたいと、そう思った瞬間だった。

｢降魔さん！！｣

｢…緑谷、くん？｣

大きな衝撃音と緑谷くんの声が響く。檻は破壊され、こちらに手を差し出す緑谷くんが見えた。

｢ヒーローになれるよ…降魔さんなら！｣

腕を引かれて立ち上がる。

｢嘘だったら承知しないからね｣

久しぶりに満面の笑みを浮かべた。