悪魔の番外編【ヒロアカ】 (ページ4)

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○○しないと出られない部屋：Ver.緑谷出久ページ4

わたしは真っ白な部屋で、緑谷くんと向かい合わせに座っていた。緑谷くんは緊張した面持で気まずそうに口を結んでいる。

事の発端は10分前くらい。わたしと緑谷くんはそれぞれの買い物の途中で出会ったんだけど、そのまま一緒に回ってるうちに落とし穴に落ちてしまったのだ。
普通の路地に落とし穴なんてあるはずがないし、きっと敵の仕業なんじゃないかとは思ってるんだけど、そこはあんまり問題じゃない。

問題なのは、落とし穴に落ちたあとだった。
落とし穴に落ちたあと、この真っ白な部屋にいて、その上変なお題まであるのだ。そのお題が恋人繋ぎをすること。
わたしは別にいいんだけど、緑谷くんは恥ずかしそうにして繋いでくれない。そうして、このまま時間がどんどん過ぎているんだ。

｢緑谷くん？そろそろ…｣

｢う、ううううん！ぼ、僕もそうしなきゃとは思ってるんだけど、その…えっと……｣

もじもじと少し顔を赤らめて言いづらそうにする緑谷くん。続きを促せば、わたしは嫌じゃないのかって心配してくれた。

｢大丈夫！緑谷くんだから嫌じゃないよ｣

｢へっ！？そ、そっか！｣

差し出された傷だらけの手をぎゅっと握りしめる。わたしの手より少し暖かいそれは、骨ばっていて男の子らしい手だった。

そのままムギュムギュと握ったりして遊んでいると、カチッと音が鳴る。鍵が開いたみたいで、緑谷くんの手を離して扉の方へ行く。
扉が開くのを確認して緑谷くんの方へ向き直ると、すぐ後ろに緑谷くんがいた。そのままふわりと抱きしめられる。

｢その……降魔さんは、もう少し危機感を持ってもいいと思う…よ？｣

そう言うと腕を解いて扉から出ていく緑谷くん。残されたわたしは真っ赤になるしかなくて。

｢恥ずかし…｣

その場にしゃがみこんで、顔の熱が冷めるまで動けなかった。

＊＊＊

｢……やってしまった｣

熱が顔いっぱいに広がって、振り返れない。降魔さんの小さな声が聞こえて、余計に恥ずかしくなる。

我慢ならなかった。意識されてないみたいで。悔しいような切ないような、そんなぐちゃぐちゃの感情に支配されて、気付いた時には抱きしめていた。普段の僕だったらありえないことだ。それでも、後悔はしてない。

｢これで意識してくれるようになったらいいのに｣

なんて、ありもしない幻想に縋るんだ。