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明日は、オーディション。
この一週間、私は練習の虫になった。
あいつにあって、自分にはないものを私は分かっていたから。
あいつは踊らされているんじゃなくて、音を、振りを、空気を自分のものにしていた。
どうしたらそれができるのか、暗闇を探るように踊っていた。
何度やっても、分からない。
どれだけ踊っても、届かない。
どこがいけないの？
どこがあいつと違うの？
そんなとき、あいつは私に言った。
「考えてたら.....終わりだよ」
はっ、とした。
何をしているのだろう。
簡単なことじゃないか。
見上げたあいつの顔は、またニヤッと崩れた。
「今回のセンターは.....」
ゴクリと唾を飲みこんだその音だけが、スタジオに響く。
「Aだ」
うわぁっと、周りから歓声があがる。
ついに私は、あいつに勝ったらしい。
「A、いつものお前と見違えるような踊りだったぞ！カイは、Aの斜め後ろについてくれ」
あれだけ望んでいたはずなのに、なぜかしっくりこない。
モヤモヤとした気分でいると、ぽん、と頭に手が置かれた。
「なんで、浮かない顔してんの。俺に勝ったんだから、もうちょっと喜べよ」
『そうなんだけど.....』
分かってる。
悔しいけど、今回の勝ちはあいつのお陰。
あのとき、ああやって言ってもらえなかったら、私は永遠に自分の考えにがんじがらめになっていただろう。
悔しい。
「なに、俺と隣が良かったわけ？」
『なっ、！なんで、あんたなんかと.....』
そんな私の考えになんて全く気づかず、あいつは検討外れなことを言った。
くっそ.........！
なんで、あんなやつに！！！
「ジョンイン」
『は？』
「俺の名前、ジョンインだけど」
『知ってるわよ』
「A、俺の名前全然呼んでくれないんだもん」
そう言って、頬を膨らませるあいつは『カイ』ではなかった。
『..........ジョンイン』
「よくできました」
私の髪の毛をくしゃくしゃとジョンインはなでた。
ドキッ
あいつ、いやジョンインに対するイライラはいつのまにかすーっと消えていた。
その代わり、昔何度か聞いたことのある、心臓の音が私のなかに響く。
はぁ.....厄介だ。
あいつの隣は嫌、なんて思っていたはずなのに。
END
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作者名：まほまほ | 作成日時：2016年5月8日 21時
