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いつものように俺は、家でお留守番。
ご主人は、お仕事に行っている。
そろそろ帰ってくる頃だろう。
リビングでゴロッと横になりながらも、耳だけはしっかり働かせ、ご主人の帰宅に備える。
ガチャ
鍵が開いた音の後、ドアが開く音が聞こえる。
どうやら、ご主人が帰ってきたようだ。
「んにゃーーー」
お帰りなさいとお疲れ様とお腹すいた、という気持ちを込めて一鳴きする。
それから玄関に向かい、靴を脱いでいるご主人にスリスリ。
『..........』
ご主人は何も言わずに、俺の頭を撫で、自分の部屋の方に向かってしまった。
おかしい。
いつもなら、『ただいまぁー』と言って、俺を抱き上げてくれるはずだ。
それから、自分のご飯の前に俺のご飯を用意して、食べている姿を幸せそうに見つめるはずだ。
心配になり、ご主人の後をついて歩く。
案の定、自分の部屋に入っていったご主人は、無言でベッドへなだれ込んだ。
俺が部屋に入っても、ご主人は俺を追い出すことはなかった。
ただ、枕に顔をうずめ、静かに泣いていた。
こんなとき、俺が人間だったらと強く思う。
そうしたら、何があったのか優しく聞くことが出来るし、その後に優しく抱きしめてあげることだってできる。
どうしてご主人は人間で、俺は猫なんだろう。
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作者名:まほまほ | 作成日時:2016年5月8日 21時