ねむれるてんしさま【ブルーロック】 (ページ33)

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31.赤豹の目覚めページ33

side 透凛

残り少ない試合時間の中、潔さんを始めとするチームZの皆さんは走り、叫び、ゴールを求めてボールを追っている…1人を除いて。

『千切さん…体調とか、悪いんでしょうか』

「…『アレ』はそういうのじゃないだろうな。『諦める理由を探しにブルーロックに来た』って言ってたくらいだし、過去に関する何かだと思うよ。」

…諦める理由、か。私はもっと千切さんのサッカーが見たいけれど、そうはいかないのかな。

90分間の試合は終了し、残りはアディショナルタイムの3分間のみ。ボールを持つ潔さんは当然相手に囲まれる。

あれ、どうするんだろう…ボール、取られちゃうよ…そう思った瞬間、潔さんはドリブルで相手を抜いた。…潔さん、個人技できたっけ。…いや、様子がおかしい。あれは所謂『暴走』状態…？

惜しくも鰐間兄に防がれたものの、潔さんは何度も喰らいつく。…そんな中で、こんな一幕があった。

＿＿＿＿＿「どけ！！！！」

そう叫んだ潔さんは、ボールを拾った千切さんを突き飛ばして個人技を再開したのだ。潔さんはそのままゴールまで進んでいく。仲間からの「パスを出せ」という忠告にも耳を貸さず、ただ走る。

その場の皆が潔さんに注目している。潔さんに注意を払い、彼からボールを取ろうと…はたまた彼からパスを貰おうとしている。

だけどその後ろ。タッチラインギリギリを駆けるあの人がいる。

『千切さん…！？』

はやい、速い、疾い…！千切さんはどんどん駆け上がり、潔さんからのパスを貰おうと走り続ける。空間認識能力が高い潔さんは、いち早く千切さんに気がつきパスを出した。

…味方のいない、敵陣へと。久遠さんがクリアしてしまうかと思ったそのボールに千切さんは追いつき、ゴールを目指す。誰も予想しなかった俊足の登場に、チームWの人達はもちろん、チームZの人達も驚いている様子。

…先程までと明らかに様子が違う千切さんに、目を奪われる。あの俊足なら、もしかしたら…。

千切さんは突如として、前へとボールを蹴る。そして走り…追いつく。『自分で出したパスに、自分で追いつく』。そんな芸当を初めてみて、心が躍った。

千切さんは敵の邪魔を掻い潜り、とうとうGKと1対1。誰もが彼らに、たくさんの願いを込めて注目した。ゴールへと進むボールに、2人は走る。千切さんは前へと飛び、ボールへと足を伸ばす。GKの手から流れたボールは千切さんの爪先に当たり…ゆっくりと、ゴールへ吸い込まれていった。