ねむれるてんしさま【ブルーロック】 (ページ32)

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30.緊張と願いページ32

side 透凛

＿＿＿＿＿「お前…裏切ってんのか…？チームZ(おれたち)のこと…」

そんな声が、モニターの中から聞こえてくる。声の主は、潔さんだった。彼はへたり込む久遠さんを見下ろして、彼に問う。…あぁ、気づいたのか。

その問いかけに答えたのは久遠さんではなく…鰐間兄弟。彼等はニヤニヤと気味悪く笑いながら、裏切りの話を洗いざらい話していく。チームZの皆さんにとっては藪から棒、驚いた顔をしている。

しかし雷市さんは当然怒りを露にし、久遠さんの胸ぐらに掴みかかる。…正直久遠さんの裏切りを目にしている身からすると、容認したい所なのだけれど。審判を兼ねている立場上、注意しなければならない。

『らいちじんご……イエロー、カード。ただちに自陣に戻り、試合を再開してください…っ』

…やば、声震えちゃった。だって、悔しいじゃん…こんなのが許されるサッカーなんて…アンリさんが好きなサッカーでも、私が好きなサッカーでもないもん…。

だけど、その間にも試合は再開し、チームWは12-10のサッカーで嘲笑うように逆転した。

…試合時間は残り、15分。12-10という圧倒的不利の中、当然試合はチームW優勢で進んでいく。潔さんが取られたボールはゴール前まで繋がり、鰐間兄がシュートを打つ。突然のことに息を呑んだが、間一髪伊右衛門さんが防いだ。

伊右衛門さんの言う通り、この試合は引き分けにさえすればチームZの皆さんの望みは繋がるのだ。あと1点、お願い…！気づいたら、両手を握りしめていた。心臓の音は早くなる一方で、掌には爪がどんどん食い込んでいく。

…千切さんに、ボールが渡った。鰐間兄弟の弟は千切さんに近づき、ボールを奪う。…データには、あの人達は同じ高校だとあった。そして、千切さんが試合中に怪我をして、次同じ所を怪我したら選手生命が危なくなったともあった。その時に、何かしらのいざこざがあったのかもしれない。

暗い顔をする千切さんは容易くボールを取られるとすぐに足を止めてしまった。そりゃ、そうだよね…。嫌なことなんて、すぐには忘れられないし…自分の中で網を張り巡らせて、心を蝕んでいくんだ。私もそうだから…似たもの同士、なんていうのは烏滸がましいかな？まぁ千切さんに嫌な事があったかは分からないし、今彼が何を考えているのかなんて想像もつかないけれど。